研究課題/領域番号 |
26420229
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
横水 康伸 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50230652)
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研究分担者 |
松村 年郎 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90126904)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 遮断器 / 大電流 / 限流 |
研究実績の概要 |
IGBT(Insulated Gate Bipolar Diode) を用いた低圧用直流遮断器を提案・試作し,その仕様の適正化によって電流遮断性能を向上させることを目指している。これまで本モデル器での限流遮断過程においては,IGBT のゲート・エミッタ間電圧を時定数10 msで低下させてきた。しかし,研究の進行過程において,時定数を他の値に調整すれば,電流遮断性能を向上できる可能性があることに気づいた。そこで,今年度においては,時定数を5および1 ms に設定し,電源電圧120Vおよび回路インダクタンス4.2mHの下で,80~200Aの直流電流遮断実験を行い,以下の3項目を検討した。i)電流遮断性能, ii)IGBTでの累積ジュール熱,およびiii)異常電圧の発生。その結果,時定数が5および1 msの場合,累積ジュール熱が低下し,遮断失敗が防がれ,200A遮断を達成できた。一方で,時定数1msの場合,モデル器端子間に800 Vを超える異常電圧が生じてしまう。時定数10 msの場合,累積ジュール熱が約30mJに達し,160A以上の電流を遮断成功できなかった。従って, 時定数5ms が適正であることを見いだすことができた。 遮断器の遮断責務を低減させることを目的として,低圧直流用限流器の回路構成を考案してきた。この回路構成の特徴は,受動素子あるいはダイオードなどから構成されること,すなわち制御回路および制御用電源を不要とすることである。本年度においては,考案した回路構成の一つ(L-R型)に関して,直流電流遮断プロセスおよび遮断器に発生する電圧を計算によって求めた。この計算においては,限流器の抵抗素子の抵抗値を0.1~5 ミリオームに設定した。抵抗値として,1オームに設定すれば,80Aの電流を57Aに限流できること,遮断器には過渡的過電圧は発生しないことを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IGBT(Insulated Gate Bipolar Diode) を用いた低圧用直流遮断器において,時定数を適正化し,電流遮断性能を向上するとともに,累積ジュール熱を低下し,過渡的異常電圧の発生を回避した。本実験で用いたIGBT素子の定格電流は100Aであるが,それよりも約2倍の200Aを遮断できることも見いだすことができた。電流抑制部である限流器に関して,コンデンサ使用型も考案し,その特性を提示することができた。
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今後の研究の推進方策 |
近年,SiC系パワー半導体が開発されている。SiC系パワー半導体は次世代のパワー半導体デバイスとして,高耐圧・低損失の次世代パワーデバイスとして,パワーエレクトロニクス分野で期待されている。本研究では,SiC系半導体をいち早く電流遮断技術へ適用し,モデル器を試作する。SiC系パワー半導体を用いた低圧用直流遮断器で遮断実験などを行い,Si系遮断器との得失を提示する。 電流抑制部である限流器に関しては,これまで主として限流過程および特性を提示してきた。しかし,限流すべき電流は最終的には遮断器によって遮断される。そこで,遮断器による電流遮断過程を考慮することに展開させる。
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