研究課題/領域番号 |
26420230
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
木村 高志 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60225042)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマイオンプロセス / ダイヤモンドライクカーボン / パルスプラズマ / 対向タ-ゲット型スパッタ / マグネトロンスパッタ |
研究実績の概要 |
高密度パルス放電プラズマ中に存在するイオンの制御法を物理的な知見に基づき確立するとともに、密着性を保ち、高い膜密度かつ高硬度な機能性アモルファスカーボンや金属(窒化物、酸化物)のコーティングを実現することを研究目的としている。 本研究では、対向ターゲット型(ターゲット材:炭素)スパッタリング用パルス放電プラズマによりダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜の作製を行った。パルス電圧印加の繰り返し周波数を120~250Hzとし、-1.2kVの負パルス電圧を1パルスあたり50μs間 ターゲット電極に印加した。パルスプラズマ形成時でおよそ1.8A/cm2の電流密度が流れ、1.4kW/cm2の瞬時電力密度に達した。この条件下で作製した膜厚0.4マイクロメ-トルの膜の硬度は25GPaに達し、従来のマグネトロンスパッタ方式に比べかなり改善した。さらに、コーティング膜の微細構造を知るためにX線光電子分光測定を行った結果、従来のマグネトロンスパッタ方式に比べ sp3結合(ダイヤモンド成分)をより多く含むDLC膜が作製可能であることを示唆することができた。 つぎに、高硬度DLC膜の形成速度の改善を目的として、希ガスと炭化水素系ガスの混合ガスを用い、平板タ-ゲット型パルススパッタシステムと基板向けパルス・バイアス・システムを組み合わせた装置で成膜を行った。その結果、希ガスのみを用いた場合に比べて硬度等は幾分低下するのだが、炭化水素系ガスとしてメタンを用いた場合で2-5倍、アセチレンを用いた場合で約10倍の成膜速度が実現できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対向ターゲット型スパッタリング用パルス放電プラズマを用いて、基板への高密度炭素イオン入射によるダイヤモンドライクカーボン成膜を実現し、従来方式に対し優位性を見いだすことができた。 炭化水素系ガスを混合したガス中での平板ターゲット型パルススパッタと基材へのイオン入射制御が可能な基板向けパルスバイアス制御システムを組み合わせた装置で成膜速度の大幅な改善も実現できた。
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今後の研究の推進方策 |
高密度パルスプラズマ中で生成された高密度イオンによる成膜ならびに粒子作製などの多目的プラズマイオンプロセスの実現を目指す。その目的を達成するための今後の研究の推進方策を以下に記す。
1. 基板バイアス制御システムを組み込んだ対向ターゲット型ならびに平板タ-ゲット型パルススパッタプラズマによる金属窒化物、酸化物のコーティングを行い、成膜装置としての評価を行う。高硬度コーティング膜形成時に発生する内部応力が密着性や膜の破損を引き起こすため、応力を高エネルギ-のイオン注入により緩和させる試みも実施する。
2. ホローカソード型パルス放電プラズマ特性に関する実験的研究を行う。さらに、ホローカソード内やカソ-ド近傍で存在する高密度のイオンの制御を行いながら成膜応用ならびにナノ粒子作製応用を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に予定していた論文掲載が平成28年度になり、その論文掲載費が「次年度使用額」となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の論文掲載費として使用する予定である。
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