研究実績の概要 |
高密度パルス放電プラズマ中に存在するイオン制御法を物理的な知見に基づき確立するとともに、高硬度なアモルファスカーボンや金属窒化物などのコーティング材料をプラズマイオンプロセスにより作製することを本研究の目的としている。 当該年度での研究では、保護膜として用いられる高硬度TiCN膜を作製した。アルゴンガスに1%から3%程度の微量の窒素ガスを混入し、チタン材と炭素材をターゲット材とする対向ターゲット型パルススパッタシステムにより作製を行った。パルス電圧印加の繰り返し周波数を150 Hzとし、-1.2 kVの負パルス電圧を1パルスあたり60μs ターゲット電極と金属容器との間に印加し、パルススパッタプラズマを形成した。この条件下で作製したTiCN膜の硬度は最大33 GPaに達した。さらに, 作製した膜の微細構造を知るためにX線光電子分光測定を行った結果、高硬度な膜の形成において最適な窒素含有率ならびに最適なTiとCの含有比が存在することを明らかにした。 つぎに、平板タ-ゲット型や対向ターゲット型高密度パルススパッタシステムによる材料作製では、ガスの希薄化に伴うプラズマ密度の低減化 ならびに 反応性ガス導入に伴うターゲット材料の変質の問題があり、成膜条件に制約があった。これらの問題を解決する第一歩として、ホローカソード型パルススパッタシステムを構築した。ホローカソード型パルススパッタシステムでは、電流が1平方センチメ-トル当たり2A以上の条件でさえ、ガスの希薄化に伴うプラズマイオン密度の低減化は観測されなかった。
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