研究課題/領域番号 |
26420232
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松尾 哲司 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20238976)
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研究分担者 |
藤原 耕二 同志社大学, 理工学部, 教授 (20190093)
美舩 健 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20362460)
開道 力 北九州工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20373558)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電気機器工学 / 電子・電気材料 / シミュレーション工学 |
研究実績の概要 |
[1.応力依存詳細モデルの開発] 無方向性電磁鋼板の結晶方位は一様でなく,磁歪の発生する方向も非一様である。結晶粒とそれをとりまく多結晶媒質間の弾性的な相互作用をモデル化することにより,歪量や応力の鋼板内分布を考慮した,より現実に近い応力依存詳細集合磁区モデル化手法を開発した。下記2の応力特性の計測データおよび簡易モデルとの比較によりその有効性を示した。さらに,下記3のベクトル励磁下の磁気特性および磁歪特性計測データとの比較に対しても高い再現性を示した。また,上記とは別に,無方向性電磁鋼板における磁気飽和領域の磁気挙動を検討し,そのモデル化に成功した。 [2.電磁鋼板の各方向磁気特性の外部機械応力依存性の測定] 無方向性電磁鋼板の圧延方向および直角方向の磁気特性について圧縮および引張り外部機械応力に対する依存性を測定した。 [3.各種電磁鋼板ベクトル励磁下における磁歪測定] 方向性電磁鋼板について,圧延方向および直角方向の磁気特性および磁歪特性を計測するとともに,ベクトル励磁下における磁気特性および磁歪特性を計測した。 [4.エネルギー極小化高速解法の開発と大規模計算の実用化] 効率的なエネルギー極小化の手法としてを最急降下法を用いた手法を開発した。 [5.材料データ推定法と現象論的モデルの開発] ピンニング磁界の確率的な分布を仮定するモデル化を行い,磁区構造モデルに組み込む手法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベクトル励磁下の磁歪測定を実現するとともに,応力特性の計測を実現した。前年までに開発した集合磁区モデルを発展させることにより,応力分布を考慮した応力依存詳細モデルの開発を行った。開発モデルによって,応力下の磁気特性およびベクトル励磁下の磁歪特性の再現に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
[1.応力依存詳細モデルの開発] 前年度までに得られた電磁鋼板の磁気特性結果に基づいて,応力依存詳細モデルの開発を引き続き行う。鋼板厚み方向の結晶粒分布の影響を考慮するため,厚み方向を含む断面の磁区構造モデルを開発する。 [2.エネルギー極小化高速解法の開発と大規模計算の実用化] 高磁束密度化では,ランセット磁区など3次元的な磁区構造による磁化過程を考慮する必要がある。また,結晶の3次元的な配置により,応力依存性はより複雑なものとなる。これら3次元構造の影響を3次元集合磁区モデルで評価するため,効率的なエネルギー極小化の計算手法を開発する。その手法として,時間積分の陰解法化と閾値モデルを検討し,前年までに開発した最急降下法と比較検討する。また,3次元化に伴う計算の大規模化に対応するため,並列計算による高速解法を開発する。 [3.材料データ推定法と現象論的モデルの開発] 上記磁区モデルでは,材料データから磁気特性を算出することを目的とするが,ピンニング磁界については,結晶粒サイズや不純物密度などを用いた統計的な算出が必要である。磁気特性の計測結果からピンニングサイトの分布を逆算する手法を開発することにより,材料データの詳細が不明な場合にも,計測結果を用いて磁気特性を現象論的に(計測結果にフィッティングさせる形で)再現することが可能な手法を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
手持ちの鋼板試料で磁化特性および磁歪特性を計測することができたので,試料用鋼板加工費を支出する必要がなくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
新たな鋼板試料の加工費に用いる予定である。
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