本研究では、分離対象物となる細胞を作業媒体に磁気浮揚させると共に水平方向に移動させる工程により、細胞の位置を精密に制御し、選択的な分離を可能とする磁気細胞分離装置に必要な磁気アルキメデス力を発生させる磁気回路の設計を行い、精密に制御された高磁場勾配磁場の磁気力により、細胞分離を可能とする磁気アルキメデス分離装置の開発することを目的として実施した。初年度に分離装置の磁場発生源には複数の永久磁石を組合せ、高磁場勾配磁場をコンパクトにした卓上式磁気アルキメデス分離装置の設計を行い製作した。次年度に磁気アルキメデス分離の作業媒体を調製し、磁気アルキメデス分離実験を実施し細胞を磁気浮上分離するための作業媒体濃度範囲を決定した。磁気制御の際に細胞が凝集することが分離の障害となっていることが確認され、当年は分離対象物の磁気浮上制御を中心に実施した。次々年度に分散剤や超音波分散により、微小体積の細胞について細胞および模擬試料を用いて制御に必要な磁気力を検討し、本研究課題で使用した磁場発生源で磁気アルキメデス分離を行うための分離対象物の大きさが示唆された。最終年度には分散処理に注力し、作業媒体中での細胞の分散・凝集の制御を行いながら磁気力制御を実施した。上記の成果を統合して、磁気力制御に必要な作業媒体濃度や本研究で使用した磁場発生源の磁気アルキメデス分離についてのマッピングを行った。細胞磁気セルソーターの課題点などの抽出は終了したが、実用化に向けた分離装置には至っていない。今後も、本実験装置に適用可能となる領域の分離対象物のサーベイや本装置を用いた高精度な磁気力制御についての研究を行う。
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