研究課題
パルスレーザーラマン散乱法を用いた照明用白色LEDジャンクション温度のin-situ計測法の確立を目的とし,本年度は主に蛍光樹脂無し青色LEDの計測システムの開発とその改善を行った.具体的には,高波長分解能パルスラマン受光システムを新たに構築し,蛍光樹脂無し青色LEDモジュールの無点灯時,及び定電流動作時のジャンクション温度計測を通じて,構築したシステムの性能評価を行った.レーザー入射及びGaNラマン信号検出をLEDモジュール表面に垂直で同軸とし,集光システムの最適化,及び分光器の長焦点化を行い,高波長分解能を維持したまま,迷光リジェクションが大きく,明るい分光システムを構築した.新たな受光システムにより,ラマン散乱信号強度は改善前の約15倍となり,レーザー散乱光及び迷光の影響を充分に排除出来た結果,SN比の改善,及び測定時間の短縮を実現した.さらに,入射レーザーをシート状にし,光検出器としてゲート機能付きICCDカメラを使用する事で,□30mmに72個のLEDチップが直・並列接続された蛍光樹脂無しLEDモジュールのジャンクション温度計測システムを構築した.これにより,無点灯時,及び定電流動作時のジャンクション温度計測を行い,直線上に配置されたLEDチップの各ジャンクション温度を同時に計測可能なシステムを初めて構築できた.パルスレーザー及びゲート機能を有する光検出器の使用により,強い外乱光(LED発光)下でもSN比の高い計測が可能である事を実証できた.
2: おおむね順調に進展している
本研究では最終的な被測定対象を照明用白色LEDとしている.本年度の主な目標は新たな分光システムの構築と計測条件の最適化であり,そのため,先ず蛍光樹脂無し青色LEDのジャンクション部の温度を誤差±5℃で計測可能なシステムの開発を目指した.これを達成するための最も重要な課題は,微弱なラマン散乱信号を精度良く検出するための,高波長分解能パルスラマン受光システムの構築である.信号強度の増大のため,本年度は受光系の最適化,高波長分散能回折格子の利用,分光器の長焦点化を主な検討項目として,受光システムの設計,製作を行った.それに加えて,GaN結晶のラマン散乱の受光角等,実験条件の最適化の検討を踏まえて,レーザー光/ラマン散乱光のLED表面への垂直・同軸入射/受光を行う事で,従来に比べて約15倍の信号強度増加を実現した.その結果,動作中LEDのジャンクション部のリモート温度計測法としての実現可能性と有用性を示せた.しかしながら,現状では目標とした測定誤差±5℃を達成できていないため,本年度の達成度として表記の自己評価とした.
照明用白色LEDは青色LEDの前面に散乱体/蛍光体が混入された樹脂が塗布されており,この樹脂によるレーザー光/ラマン散乱光の散乱,吸収及びレーザー励起による蛍光発光が計測のSN比を著しく低下させる.特に,レーザーと同期したレーザー励起蛍光発光はゲート機能付き光検出器でも排除は困難である.従って,蛍光樹脂が塗布された白色LEDに適用できるシステムを開発するためには,蛍光体の吸収・蛍光発光の波長範囲外で,ラマン計測に影響の小さいレーザー条件の最適化が鍵となる.そこで,今後は先ず蛍光体の吸収特性の定量的把握と,及び実際に種々のレーザー波長における蛍光発光がラマン散乱計測に及ぼす影響の検討を行う.実験には波長可変のOPOレーザー,及び色素レーザーを用い,特に,分光器の波長分解能が大きく,受光素子の量子効率が比較的高い600~700nm付近を中心に検討する.具体的には,入射レーザーに対する蛍光樹脂の吸収・発光特性の定量的な把握や,レーザー波長,パワー密度,照射面積,受光角度等が樹脂からの蛍光発光,及び吸収・散乱に与える影響について調査する.蛍光樹脂がラマン計測に与える影響を最小限に抑制する計測条件を見出し,また,更なる信号強度増大によるSN比の改善と波長分解能の向上による測定精度向上を同時的に行い.動作中の照明用白色LEDのジャンクション部の温度計測が可能なシステムを検討する.
主に,資料整理等での大学院生への謝金として予定していたが,当該年度は必要が生じなかったため.
光学部品の購入,及び電子部品等の購入に当てる.
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Proceedings of the 14th International Symposium on Science and Technology of Lighting (Spazio Como, Como Lake, Italy, Jun. 22-27, 2014)
巻: 1 ページ: 245-248