本研究は、水中プラズマを用いて、大容量の排水を高速で処理するための技術を構築するための基礎的研究である。特に水中キャビテーションを発生させた場においてプラズマを発生させる点が特長である。大流量で排水しながら、プラズマ生成ラジカルによる処理反応を起こしながら、キャビテーションによる衝撃波の効果も期待できる手法である。 本年度は、処理水流方向に沿って5対の電極をリアクタに設置し、その各電極対すべてに別個の交流高電圧電源を接続して殺菌処理実験を行った。菌として大腸菌(Escherichia coli、K12株)を用いた。また、処理水量2000ccを毎分20リットルの流量で循環させた。初期菌密度は2×10^15m^-3、電極の印加電圧の周波数は20kHzで、5対電極全体のプラズマに投入された電力は約50Wの条件とした。上記の条件の下で6、18、24、30秒の各処理時間で菌の生存率を算出した。その結果、6、18、24、30秒の各処理時間における菌の生存率はそれぞれ、17.4%、3.3%、3.1%、1.3%となった。循環流量と処理水量の値から、6秒の処理時間は、処理水がリアクタを通過する回数(パス数)が1回に相当する。つまり1回のリアクタの通過で約83%の殺菌率が得られた。18秒の処理時間では3.3%の生存率が得られ、この処理時間はパス数が3回に相当する。したがって、15対(=5×3)の電極を用いればパス数1回で90%以上の殺菌率が得られ、投入電力は約150Wと推測できる。以上の結果から、キャビテーション放電方式を用いたワンパス処理に関する基礎的な知見が得られた。 さらに、本処理手法を、放射線耐性菌、枯草菌、分裂酵母にも適用して生存率を算出した。その結果、放射線耐性菌は大腸菌K12株とほぼ同程度の処理効果があった。しかし、枯草菌と分裂酵母に対しては殺菌効果が低かった。
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