研究課題/領域番号 |
26420245
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
畠山 賢一 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80305680)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 穴あき金属板 / 磁気ダイポール / 漏えい電磁波 / 磁界 |
研究実績の概要 |
放熱効果と電磁遮へい効果を同時に有する穴あき金属板は大電力機器筐体に必須である。本課題は大電力機器の金属筐体に用いる穴あき金属板の電磁遮へいについて検討する。 金属板に設けた穴からの電磁波漏えいは、入射波によって穴部分に磁気ダイポールが励起されると考え、この磁気ダイポールからの放射として与えられる。本課題で扱う大電力機器の遮へいでは、対象周波数が数10kHzから数10MHz程度の低周波であり、この範囲では筐体寸法は波長よりも非常に短いので近傍界として扱わなくてはならない。したがって、周期穴であっても波源からの距離が異なり、各穴に励起される磁気ダイポールは一定ではない。このため、まず各穴に励起する磁気ダイポールを求める必要がある。 まず、箱型の金属筐体をモデルにし、内部に磁界発生ループを置いてこれを波源とし、穴あき金属板を設置する面の磁界分布(強度と方向)を数値的に求めた。磁気ダイポールを励振する磁界は金属面接線成分である。波源と穴の位置関係により、強い磁気ダイポールが励起される穴と弱い磁気ダイポールしか励起されない穴がある。当然、磁気ダイポールが弱いほど電磁放射が小さい。これより、穴は金属板に単に周期的に設けるのではなく、放熱に必要な穴を磁気ダイポールが弱い位置にのみ設ければ、穴からの電磁放射は少なく、したがって遮へい効果が増すということになる。計算では単純に周期穴を設けた場合に比べ、磁界が弱い位置に穴を設ければ漏れ磁界に30dB程度の差が出ることが分かった。 この考えを確認するため、内部に磁界発生源を設けた箱型金属筐体モデルを試作した。さらにモデル周囲の磁界分布を精密に測定するため、精密級のプローブ移動ガイドを用いた磁界分布計測システムを試作した。測定の結果、シミュレーションとよく合う結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大電力機器筐体に穴あき金属板を使用する際の電磁遮へい効果について、近傍界においても穴部分に励起される磁気ダイポールを求めれば、漏えい電磁波を予測できることが確認された。このことより、穴あき金属板設置前の磁界分布を予め求めて、磁気ダイポールをできる限り弱くする位置に穴を設ければ、放熱効果を下げずに良好な電磁遮へいが得られることが導かれる。 本手法は、磁気ダイポールを決定する磁界分布は遮へい材である金属板を設置する前の磁界分布であることが特徴であり、これにより本手法が実用的に使いやすい方法となっている。遮へい材となる金属板面の磁界分布は、波源が既知の場合はシミュレーションで計算可能である。また、たとえ波源分布が未知であっても、本課題で試作した磁界分布計測システムにより実測すれば得られなど、実用的な成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
試作した電子機器筐体モデル、および磁界分布計測システムを用い、磁界分布、磁気ダイポール、磁気ダイポールからの放射の関連を実験的に確認するとともに、放射が最少となる穴の設け方について検討する。 大電力機器として、磁界発生ループを入れた箱型筐体モデルの他に、より実用に近いケースについて検討するため、電磁波発生回路を内蔵する筐体モデルを検討する。穴部分に磁気ダイポールを励起するという基本的な取扱いは変わらないが、各穴に励起する磁気ダイポールの強さが周波数毎に変化する場合などについて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平面内磁界分布測定のため、精密級プローブ移動ガイド(スライドガイド)をx,yの2軸購入予定であったが、1軸は既存ガイドを利用したため購入は1軸分で済み、当該ガイド1軸分一式の費用を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
測定用穴あき金属板の試作追加するとともに、電磁波発生源を含む筐体モデルの試作を行う費用に充てる。これにより、実用に近い状態で穴あき金属板の穴位置と磁気ダイポールの関係、遮へい効果の評価を行う。
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