研究実績の概要 |
大型電子機器、或いは自動車を含む電動機器の電源部などの大電力装置は、大電流のスイッチング動作により磁界発生源となるので磁界遮へいが必要となる。機器筐体は近傍界にあるので、導電率が十分大きい金属板を遮へい材として用いるが一方、大電力機器の放熱のために遮へいが不完全な穴あき金属板を使用しなければならない。本研究は穴あき金属板の電磁遮へい効果について研究した。 Betheの小ホール理論によれば、穴あき金属板を用いる筐体の電磁遮へい特性は、筐体板への入射磁界によって穴部分に発生させた磁気モーメントからの放射により得られる。穴から漏洩する磁界を評価するために、磁界発生源を内部に持つ6面体の筐体を想定し、その一面を穴あき金属板にするときの漏洩磁界をMathcadで数値的に求めた。また、実験的な評価のために、筐体モデル(218mm×178mm×120mm)と2次元のプローブ走査装置を試作した。走査装置は、櫛状パルス発生器、電力増幅器、スペアナと連動し、660点の測定(130mm×170mmの面を5mm間隔で走査)を40分で行うことができる。穴あき金属板は、半径3mm,6mmの円形穴を周期的に設けた板、および予め測定した磁界分布を参照して磁界の強い部分、弱い部分に集中して穴を設けたものを試作した。 周期穴を設けた金属板からの漏洩磁界は、漏洩磁界の分布は穴あき金属板への入射磁界によく似た分布になることが数値解析、実験より確認された。これより、金属板面での磁界分布を予め測定すれば漏洩磁界の最大値位置が正確に予測できるので、遮へい対策が容易になる。また、穴位置を入射磁界が弱い位置に設ければ漏洩磁界も弱くなることが確認され、穴の総合面積が同じでも30dB程度漏えい磁界を抑制できるなど穴あき金属板の電磁遮へいを扱う上で非常に有益な結果が得られた。
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