研究実績の概要 |
スイッチング電源回路における動作周波数の高周波化により,一周期当たりで扱うエネルギー量が減少し,インダクタやキャパシタの体積サイズを縮小できる.このことから電源自体の小型・軽量化が図られ,電源回路における達成目標の1つとされている10 W/立方cmが実現可能となる.その一方で,高周波動作において,回路内の寄生インピーダンスの影響が顕在化する.つまり回路配線パターンやその構成素子の寄生成分に起因するサージ電圧やテール電流,それらのリンギング現象によりスイッチング損失が発生し,さらにその損失による発熱により素子の破壊を誘引するため,それらの抑制が課題であった. 本研究では,フライバックコンバータ回路で使用されているスイッチングデバイスとして,高速切換動作が可能と考えられるワイドバンドギャップ半導体であるシリコンカーバイド(SiC)材料デバイスに着目した.具体的にはJFET(接合型-電界効果トランジスタ)とMOSFET(金属酸化物半導体型-電界効果トランジスタ)の主要2種類のデバイスに対して,それぞれ静特性ならびに動特性の評価を行った.動作周波数は最大で10 MHzとした高速スイッチング時における波形観測と損失の評価から,それらを比較検討した. 静特性評価には,半導体カーブトレーサ装置(CS-3300, 岩通計測社製)を用いた.また動特性評価のための測定回路は,可能な限り寄生インピーダンス成分が小さくなるように設計・製作した.これらの静特性および動特性の評価から,スイッチング損失を実証した.DC/DC変換回路として, JFET(整流機能)とMOSFET(スイッチング機能)を相補的に利用する回路の提案,それらの作製により,同期整流位相制御による10MHz駆動のフライバックコンバータを実証した.
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