研究実績の概要 |
本年度は,容量結合で体内―体外間通信を行うための,(1)人体組織中のデジタル通信用波形整形フィルタの設計・試作と,(2)容量結合型ワイヤレス電力伝送における周波数変化時の効率測定を行った.(1)においては,人体組織が容量成分を持つため,送信波形がきれいな矩形波であっても,受信波形は大きく歪んでしまうことが問題になっていた.このため,波形整形回路を作成し送信波形が復元できるか検討した.主に,高速コンパレータを用いた2段のローパスフィルタ,シフトアップ回路,コモンモード除去フィルタにより,波形整形回路を作成した.0.3%のNaCl水溶液を介して通信実験を行ったところ,送信波形の矩形波と同周期の正弦波に復元することに成功した.また,(2)においては,1~10MHzの周波数帯において,AC-AC間の伝送効率,最大受電電圧を電磁界解析・実測した.最大効率は5MHz付近において,0.058%が得られた.受電電圧は,伝送周波数4MHz, 送電電流900mA(送電電極付近の電流密度,11.25 mA/cm2)において,100 オーム負荷では受電電圧2.46 V,30 kオーム負荷では受電電圧3.75V が得られた.周波数が増加するとともに,受電電圧は増加する傾向にあった.ただし,受電電圧の測定には,通常のオシロスコープ(Agilent, U1620A)と受動プローブ(Agilent, U1561A)を用いたため,4MHz帯域においてはプローブ容量やオシロスコープ内の容量により等価インピーダンスが低下し,被測定物に影響を与えている可能性が大きい可能性が考えられた.このため,この測定に関しては,低容量でかつ高インピーダンスのプローブ等を購入し,測定し直すことを検討している.これらの成果は,次年度,IEEE等の国際会議で発表する予定である.
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