研究実績の概要 |
本年は,人体組織中を容量結合デジタル通信した場合に,送信電極の位置が動いた場合でも,常に安定した通信が実現できるように,波形整形ローパスフィルタと増幅回路の再設計を行った.ローパスフィルタのカットオフ周波数を8k~800 kHzまで,また,増幅回路の増幅度も1~40倍まで変化させ,100文字のテキストを伝送した場合における誤り率を測定した.模擬人体はヒトの筋を模擬した直径24cmのものを用い,0.5S/mのNaCl水溶液とした.送電電極を,①水槽中央,②水槽の縁に近いところ(受信電極が近くにないところ),③水槽の縁に近いところ(受信電極近傍)に動かしたときの誤り率測定を行った.その結果,カットオフ周波数17 kHz,増幅度10~20倍のときに最も誤り率が小さくなり,正しく伝送できた確率は①100%, ②100%, ③ 99.5%であった.他の周波数で誤りが増える原因として,実験室の蛍光灯から発生している50kHz付近の放射性妨害波が大きく影響していることがわかった. また,体表面から,胃の内部に埋め込んだ医療デバイスに,電磁誘導で電力伝送しながら,同時に,胃の内部に埋め込んだ医療デバイスから体表面に,容量結合型情報伝送を使って情報伝送することができるか電磁界解析による確認を行った.容量結合の受信電極位置(体外側)を,電磁誘導用受電コイル(体外側)の外側と内側とどちらに置くべきか,比較検討したところ,やはり双方の干渉は避けられないが,受信電極をコイルの内側においた方が電力伝送や情報伝送に及ぼす影響が小さいことが明らかとなった. さらに,体内に電力伝送した電力を一時的に蓄える方法として電気二重層キャパシタを用いた方法が考えられるが,その安全な充電方法について,特許を出願した.
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