研究実績の概要 |
本研究は,我々が提案している従来のブラシレスモータの1巻線を複数に分割したマルチコイルモータを用いることで,モータのトルク,速度,位置制御特性,電力効率の改善を目的としている. この実現のためにデジタル直接駆動技術を応用し,その特性を大幅に改善する方法の研究を進めている.提案する方法では,従来とは異なりモータを構成する従来のコイルを分割し,これを個別に制御する.このコイルの駆動数を変更することによりモータのトルク-速度特性を可変することが可能となる.昨年度はコイル位置の誤差によるトルク変動を低減するため,コイル位置の誤差および素子値誤差の影響を低減するNSDEMの提案を行った.また,3相の全コイルを対象としたNSDEMの提案を行った.本年度は昨年度の結果を踏まえ,3相を対象としたNSDEM,ΔΣの設計を行った.従来のインバータでは,3相のコイルを駆動するそれぞれの電圧をPWM変調して生成している.一方,昨年検討したNSDEMを用いるためには,3相すべての情報を元に分割されたコイルの選択を行う必要がある.これを効率的に実現するため,3相のコイルを駆動する信号を振幅および位相のベクトル信号に変換し,このベクトル信号に最も近いU,V,Wのコイル駆動数を決定するベクトル量子化器を用いるベクトル型ΔΣ変調器を考案した.従来のインバータの各相の出力は1電源で駆動する場合,0,もしくはVdd(電源電圧)の2値になる.一方,提案方式ではU,V,Wの各コイルをm分割しているため,等価的に0,Vdd/m,2×Vdd/m, 3×Vdd/m,, ,Vddのマルチレベル出力が可能となる.本方式では電源電圧は1つで良く,システムの小型化に貢献できる.
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