塊状磁極同期機は,低コストなどの利点を持つ一方で,表面損失によって磁極が過熱して損傷する懸念を有している。そのため,構造設計時に表面損失を高精度計算することが望まれている。ところが,現状の計算方法は精度が不十分である。表面損失の発生原理も十分に解明されていない。そこで本研究では,これらの問題点を解消するとともに,表面損失の低減対策として知られるグルーブ(磁極の表面に施した溝)の原理解明と実機検証などを目的に,以下の研究に取り組んだ。 平成26年度は,グルーブの無い塊状磁極同期機の表面損失を測定して,有限要素解析(FEA)の精度を検証した。また,表面損失の発生原理も解明した。その結果,塊状磁極同期機の設計段階において,負荷時の表面損失を評価することが重要なことを見出した。加えて,磁極端高さを高くすることにより表面損失が低減できることなど設計に有用な指針が得られた。 平成27年度は,平成26年度に得られた知見を基に,表面損失が低減できるグルーブ付き塊状磁極同期機を試作した。併せて,実験環境を整えた。平成27年度は,この実験環境を利用して,グルーブ無し塊状磁極同期機の表面損失を測定した。 平成28年度は,平成27年度に試作した実験機を用いて,グルーブ付き塊状磁極同期機の諸特性を測定した。また,FEAを用いて,グルーブを施した磁極の現象分析も行った。その結果,グルーブを施すことにより,効率の低下なしに効果的に表面損失を低減できることがわかった。また,磁極表面が磁気飽和しやすくなり,界磁電流の増加や負荷角の低下を引き起こすことも明らかになった。
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