研究課題/領域番号 |
26420265
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
鈴木 雅史 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60226553)
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研究分担者 |
カビール ムハムドゥル 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (10422164)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 除染 / 動電処理 / セシウム / 錯化剤 |
研究実績の概要 |
放射性物質によって汚染された土壌の浄化方法として掘削除去が主に行われている。しかし,掘削除去は技術的には難しくないが,汚染土壌の掘削・運搬や保管などの管理における作業員の安全や周辺環境への配慮,膨大な除去土壌の保管施設など課題も多く,特に汚染サイトの大部分を占める中山間地においては汚染物質の拡散や作業時事故の危険性から適用が難しい。こうした現状の中で,汚染土壌に対する原位置処理技術の研究が行われている。原位置処理は,掘削除去と比較して処理コストが低い,環境破壊が少ない,現場従事者への曝露の危険性が小さいなどの利点を有している。 動電学的手法は,土壌中に電極を設置し,直流電流を流すことで電気分解,電気泳動および電気浸透といった界面動電現象を誘起し,汚染物質を電界方向に移動させて除去する方法である。導電学的手法の効率向上のため,土壌に吸着した汚染物質の脱着を促進する錯化剤を利用する検討が行われている。代表的な錯化剤であるエチレンジアミン四酢酸(EDTA)は重金属の抽出に対して有効であることが示されている。しかし,EDTAは錯化剤として比較的高価であり,微生物によって分解されない。一方,クエン酸および酢酸は,根酸として土壌中に自然に存在し,入手および扱いが容易な錯化剤である。また,重金属汚染土壌に対する錯化剤を使用した動電学的手法の検討に比べ,これらの酸の適用を放射性核種汚染土壌に対して検討した報告は少ない。 本研究では,中山間地の放射性セシウム汚染土壌における動電学的手法による原位置処理を目的として,斜面のセシウム汚染土壌に対するクエン酸および酢酸を利用した動電処理のセシウム除去効果を実験により検討した。その結果から,動電学的手法における有機酸の使用はセシウム除去率の改善に有効であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
錯化剤を用いることで,大幅な処理効率向上が図られ,特に土壌のζ電位と処理効率の間に大きな関連があることが明らかになった。また,電極の作製も概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に作製した動電処理テーブルプラントの陰極に,同じく前年度開発したゼオライト電極を組み込み,動電処理を行う。この際,印加電圧などをパラメータとし,前年度と同様に土壌中からCsイオンを除去し,これが排水中に含まれないことを確認する。必要に応じて,動電処理条件,電極の特性の見直しを行い,システムの最適化を行う。 ゼオライトと同様に,高いCsイオン吸着能を持つ籾殻燻炭を用いた電極の作製について検討する。電極の作製に際しては,バインダーを用いた加圧成型法の他,育苗用として開発された籾殻燻炭マットを利用することで,比表面積を高くし,よりイオン吸着性を高めることが可能か検討する。 ゼオライト電極と同等あるいはそれ以上の性能が期待できれば,新たにこれを陰極として動電処理に応用可能か検討する。また,産業廃棄物のほぼ半数を占める余剰汚泥を炭化,賦活化することで活性炭とし,これをゼオライトに添加し,導電性化する技術についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
動電処理において,錯化剤を使うことによりCsの除去効率が大幅に異なることが分かり,最適な錯化剤の種類,量の選定を優先したため,ゼオライト電極作製の実験が少し遅れた。このため,電極作製に必要な実験機材等の購入が次年度になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
多少の購入計画の変更はあったが,当初の予定通り電極作製用の素材の購入,学会での成果発表などに予算を使っていく。
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