研究課題
まず、従来の遮断円筒導波管を用いた場合に、試料厚みが発生することによる誤差増大のメカニズムを、計算によって明らかにした。遮断円筒導波管法による誘電率の測定結果の不確かさの最大要因は試料厚みの測定誤差によることが分かっていたが、試料が10ミクロン以下の厚みになると、導体空洞の寸法の測定誤差の影響が急激に大きくなることが分かった。この結果を確認すべく、試料厚みを数ミクロンから数十ミクロンにした同一材料のサンプルを作成し、誘電率測定結果の厚み依存性を確認したところ、計算により予測結果と一致するという結果を得た。このことは、本研究の必要性を明確に示すものであり、本研究の「試料以外の測定系のパラメータに存在する不確かさの影響を消去する」という点が、薄方試料測定精度の鍵を握ることが示されるとともに、測定装置を作成する上で、高い工作精度が特に必要な箇所を特定する上で、貴重な知見を得ることが出来た。この結果を踏まえ、研究計画に沿って誘電体薄膜評価用測定装置の作成に取り掛かった。一方、自動測定プログラムの開発については、共振特性を効率よくかつ高精度に取得するためのアルゴリズムを開発すべく、予備実験を行った。その結果、測定器備え付けのカーソル法による電力半値幅の読み出しに大きな誤差が含まれる場合がある事を見出し、その際の有効な対策を考案しその妥当性を実証した。現在、この知見をもとに誘電率測定のための共振特性取得ソフトウェアを開発している。
3: やや遅れている
測定装置および測定用ソフトウエアを開発するに当たり、測定誤差発生の要因を確認するために相当の計算及び実験を要したため
測定誤差要因が特定できたため、実験装置作製の際に大いに参考となる知見を取得できた。現在まで、測定系に必要な自動ステージ、コントローラ、制御用計算機、インータフェイスなど必要な部品がそろい、測定装置を組み立てておりまもなく完成する予定である。測定装置以外の必要物品は昨年度使用したものがそのまま利用可能であるので、昨年度分の研究計画の積み残し分は早々に実行できる見込みである。その後は当初の研究計画どおり、端板と空洞接触部の回路パラメータの推定法の確立による測定精度の向上、各種薄膜材料の複素誘電率測定実験、温度特性測定機能の付与と温度特性測定実験に取り掛かる。
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