研究課題/領域番号 |
26420270
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
立岡 浩一 静岡大学, 工学研究科, 教授 (40197380)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シリサイド / 金属酸化物 / 化学気相成長法 / 結晶成長 / ナノワイヤ / ナノ構造制御 / 熱電素子 / 自然エネルギー |
研究実績の概要 |
1年目においては下記にあげる様々な種類のナノワイヤについて,形状制御およびポイントに着目して構造制御を実施した。 1.ナノワイヤバンドルの作製: CrCl2を用いた化学気相成長法(CVD)によりSi基板上にCrSi2ナノワイヤバンドル(束)及びCrSi2ナノワイヤアレイを作製した。Si基板温度とCrSi2蒸気圧(CrSi2ソース温度)のバランスを考慮し,中間生成物であるSiCl4粒子の生成密度を制御し,ワイヤ密度を制御した。CrCl2を原料とする以外にFeCl2, FeCl3, MgCl2の反応を試した。 2.ナノワイヤの断面形状の造り分け:MnCl2を用いたCVD法によりSi及びSi系ナノワイヤの断面形状の制御を行った。提唱しているナノ構造制御法VLSS(Vapor-Liquid-Solid-Solid)法をより発展させ,円形から側面数の少ない三角形のナノワイヤを作製できるプロセスを確立した。ソースとして金属ヨウ化物,珪素,第三の金属粉末Ni及びFeの混合物をソースとして用いSi基板上にSi或いはシリサイドナノ構造を堆積させた。 また,純金属或いは金属化合物を大気圧中または減圧中にて熱処理する事によりFe2O3, TiO2, Al2O3酸化物ナノワイヤ及びナノロッドを作製した。ナノワイヤ,ナノベルト(シート)の造り分けは,成長初期における金属原子の基板表面拡散の異方性を利用した。ナノベルト(シート)バンドルの作製にはスパークリングプラズマ焼結(SPS)法での作製手順を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目には応用のための基礎的な材料作製と形状制御・モルフォロジー制御を行った。ナノ構造作製においてはCrSi2ナノワイヤバンドルが高密度で作製された。これは中間生成物であり触媒となるSiCl4粒子の生成密度を高密度化できた事がポイントである。しかしながら現段階では応用には小さすぎさらに大型化が必要である。原料としてCrCl2の他にFeCl2, FeCl3, MgCl2の反応を試した。原料がFeCl3の場合,Feを含むナノワイヤバンドルが成長でき新しい有効な材料のひとつとなると期待される。しかしMgCl2は無限に存在する安全な原料であるところから是非とも応用に繋げたいと考えている。種々ソース材料の検討状況は当初の予定より進み今後の発展を期待している。 ナノワイヤの断面形状の造り分けは非常に順調に進んでいる。提唱しているナノ構造制御法VLSS(Vapor-Liquid-Solid-Solid)法をより発展させ,円形から側面数の少ない三角形のナノワイヤを作製できるプロセスを確立している。触媒が大きく影響している事は明らかであり実験的には実現・制御が可能であるが,成長過程の物理現象には未だ不明な点が多い。応用技術とともに基礎的な物理現象の解明も進めたい。他の制御法による試みも引き続き検討する予定である。 Fe2O3, TiO2, Al2O3酸化物ナノワイヤ及びナノロッドの作製についてはMgAl2O4を加え材料の酸化過程で相分離,成長異方性を利用したナノ構造作製を重点に進める事に至った。焼結法での作製においては2年目において主として進める予定である。触媒を利用した形状制御・モルフォロジー制御が先行しており全体としては順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2年目にはこれらシリサイドナノ構造バンドルの電気的特性,熱電特性を評価し,3年目に最適化されたナノ構造を電極として用いた熱電発電機を試作する予定である。作製したナノ構造それぞれの,ホトルミネッセンス,カソードルミネッセンスを測定しナノ構造化による量子効果を検証する。ホール効果による電気特性評価,高温領域,低温領域でのゼーベック効果測定,導電率測定,顕微ラマン測定による微細構造変化の検証を行う。さらに,特に低次元物質がその集合体をつくる(バンドルになる)事による特性の改変を調べる。上記ナノ構造バンドルと同じ材料のバルクの特性も評価し両者を評価する事でナノ構造制御の効果を明らかにする。ナノ構造の形態,形状変化による諸特性への効果を調べる。熱電発電機電極への応用を目的として特に,ゼーベック効果測定,導電率測定,熱伝導率測定に着目し,高効率ZTが得られるようナノワイヤの形態・形状を最適化する。上記ナノ構造バンドルを電極として用いた熱電発電機の試作には実際の作製プロセスの簡便さ,素子とした時の特性を評価し,それぞれの材料,ナノ構造の長所,短所を明らかにする。
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