研究課題
2年目においてはナノワイヤ及びナノシートの形状制御メカニズムを明らかにするとともに形状制御されたナノワイヤ及びナノシートの諸物性を評価した.Si基板をHNO3/HF処理することによりSiワイヤを作製した.また生成するSiワイヤの長さの成長条件依存性を調べる事により,より長く成長する条件を検討した.さらに繰り返しエッチング処理を行う事により数百ナノメーター長のSiワイヤバンドル(束)を作製した.さらに繰り返し条件を最適化する事により,より長いワイヤの作製が期待できる.Siナノワイヤ形状制御については断面の形状が円形,六角形,四角形及び三角形のナノワイヤを作製できるプロセスを1年目に確立したが,2年目にはそれを発展させ,ナノワイヤよりナノシートに形状変化させたSiナノシートを作製した.作製したナノシートの構造を透過型電子顕微鏡で明らかにするとともに,ナノワイヤからナノシートへの形状変化がtwin-plane reentrant-edge mechanismである事を明らかにした.またカソードルミネッセンス測定により,ナノワイヤの部分とナノシートの部分では発光スペクトルの強度分布が異なる事を見出した.またナノシートの集合体であるSiナノフラワーを作製しカソードルミネッセンス,フォトルミネッセンスにより評価した.さらにCaSi2よりCaを脱離する事によりSi系ナノシートを作製した.Caの脱離方法としてCaSi2を塩化化合物雰囲気中で熱処理を施した.脱離剤としてCrCl2の他,FeCl3, FeCl2やNH4Clを用い固気反応によるCaの脱離を行った.さらにフィチン酸,クエン酸及びリンゴ酸を用い溶液中でのCaの脱離を行った.生成したSi系ナノシートのカソードルミネッセンス,フォトルミネッセンス,吸光度,ゼーベック係数,電気抵抗を測定し物性を評価した.
2: おおむね順調に進展している
2年目には応用のための基礎的な材料作製と形状制御・モルフォロジー制御に加え諸物性を評価した.ナノワイヤの物性評価は計画通りに進んでいる.ナノワイヤの形状制御を進めている過程で,基板より成長したSiナノワイヤからナノシートへの形状変化を見出す事ができた.ワイヤからシートへの形状変化はthe twin-plane reentrant-edge mechanism による新しいメカニズムで起こっている事が分かった.また基板に直接根をはるフラワー状のSiナノシートも作製する事ができ,リチウムイオン電池への応用が期待できる.この方法で作製されたSi系ナノシートの発光はバルクSiのそれとは異なっており新規な成果が現れている.Siワイヤバンドルの作製については数百ナノメーター長まで長くする事ができたが,応用上1mm程まで長くする予定である.またこの作製したSiワイヤバンドルはすでにバルクサイズの大きさを有するところから,導電性,熱電特性の評価には通常のバルクサイズ試料用の測定装置で可能である.ナノワイヤの形状制御を試みる過程でいくつかのナノシート作製方法を開発する事ができた.ナノシートの作製例はナノワイヤのそれに比べると極端に少なく今後発展させたい分野である.またフィチン酸によりCaSi2からCaを脱離し作製したSiナノシートからの発光スペクトルも観察された.フィチン酸によるCaSi2からのCa原子の脱離は研究過程で出された新しいアイデアであり今後の発展が期待できる.またこのナノシート作製法により応用するデバイスの大面積化が期待できる.さらに他の脱離剤や層状構造を有する結晶を用いる事によりさらにバラエティに富んだナノシートの作製が期待できる.絶縁基板上へのナノワイヤの成長が可能であると示した事も基板の種類を選ばないナノワイヤ成長法として期待できる.
3年目はこれまで作製したナノワイヤ,ナノシートより熱電デバイスを試作する.同時に作製したナノ構造それぞれの,ホトルミネッセンス,カソードルミネッセンスを測定しナノ構造化による量子効果を検証する。ホール効果による電気特性評価,ゼーベック効果測定,導電率測定,顕微ラマン測定による微細構造変化の検証を行う.さらに,特に低次元物質がその集合体(バンドル)をつくる事による特性の変化を調べる.Siナノシートの作製についてはCaSi2よりCaを脱離する材料としてCrCl2を用いたがFeCl3, FeCl2やNH4Clなどを用いてもナノシートを作製する事が出来る.また金属を脱離する方法としてフィチン酸などの酸性溶液を用いる方法もある.脱離の作用,効率の違いによりバラエティに富んだ構造を作製出来る可能性がある.テンプレートとして用いるシリサイドとしてCaSi2の他にMg2Si, SrSi2やBaSi2を用い,それぞれの金属原子を脱離させる事によりCaSi2の場合とは異なるSi骨格,形状をもつSi系ナノ構造の作製が期待できる.それらの諸物性を評価するとともに,熱電デバイスへの応用を試みる.MoS2をテンプレートとして用いて作製したh-MoSi2などシリサイドナノシートも研究対象とする.シリサイド系材料の成長においては,成長中における化学量論的組成の選択やモルフォロジーの制御,ナノ構造制御のため,”シリサイド化の経路” を考慮する事が重要である.適切な成長環境とソース,テンプレートの選択により生成される結晶構造,組成,モルフォロジーを制御する簡易な成長プロセスを探索するとともに,作製した材料の熱電デバイスへの応用を試みる.特にゼーベック効果測定,導電率測定,熱伝導率測定に着目し,大きなZTが得られるようナノ材料の形態・形状を最適化する.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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