研究課題/領域番号 |
26420271
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
関口 寛人 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00580599)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 希土類添加半導体 / 窒化物半導体 / ユーロピウム / GaN |
研究実績の概要 |
希土類添加窒化物半導体は耐環境性(高温・放射線)に優れ,超狭線幅・発光波長の温度安定性などの優れた発光特性を示すため,高温動作下で安定で高効率な発光デバイスの実現が期待できる。ここでは具体的に,①Mg共添加試料の発光サイト分析,②成長モード制御によるEu取り込み制御,③ナノコラムによる発光中心の増大に取り組んだ。 ①Mg共添加による発光サイト分析を行うため,PL,PLE測定を中心とした詳細な光学特性評価したところ,Mg共添加した試料では励起効率が良い発光サイトが全体の20%程度とこれまでの報告例と比較して高い値が示され,Mg共添加によるサイト選択効果が有効に働いていることが示された。 ②成長モードに着目しMBE成長中のV/III比と発光特性の関係を調べたところ,Gaリッチでの成長においては発光効率が高まるもののEu濃度が低くなることを確認された。GaリッチとNリッチでは表面モフォロジーが大きく異なっていることが示され,表面モフォロジーがEu取り込みや発光効率に影響を与えていることが示された。III族リッチ条件下で発光効率を維持したままEu濃度を向上させるために,シャッター制御法を用いたGaN/EuN交互供給法を試したところ,平坦性をキープした状態でEu濃度の増加が実現された。 ③発光強度の更なる増加を実現するために発光中心となるEu濃度増加を試みたところ,組成2%以上結晶中に取り込むと発光効率の急激な低下が観測されるとともに,表面にクラックが発生することが観測された。Eu組成増加に伴う結晶中への結晶欠陥の発生を抑制するために,欠陥抑制効果や歪み緩和効果をもつナノコラム結晶に着目し,Eu添加GaNナノコラムを作製したところ急速な発光効率の低下なく,Euイオン起因のシャープな発光を維持したまま,ドーピングレベルではなく混晶というべきEu組成6%程度の結晶を得ることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Eu添加GaNの発光効率改善に向けて結晶中に取り込まれた全てのEuイオンを活用する手法の開拓を進めている。これまでに見出してきたMg共添加効果だけでは改善が難しいことが明らかとなったが,シャッター制御法を用いた成長モード制御によるEu取り込み制御法に挑戦し,表面状態を制御した状態でのEu取り込みの改善に成功している。更に新たな手法として,無転位性や歪み緩和効果をもつナノコラム結晶の利用を提案し,実際に高濃度ドーピングを行っても大きな発光効率の低下は観測されず新たな手法として有効であることを示すことに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
シャッター制御法においては,表面平坦性やEu取り込み量,発光特性を指標にシャッターパターンの最適化を進め,発光特性の改善を図る。また発光強度の増加を実現するため,発光中心の増加を行う必要があるが,有効性を明らかにしたナノコラム結晶の高品質化を図ることで高Eu濃度結晶における発光特性の改善を実現する。 またヘテロ構造制御によりGaEuN/AlGaNダブルヘテロ構造,量子井戸構造を作製することで,エネルギー輸送効率や発光効率の特性改善を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度の前半においてMBE装置のヒータや回転機構などに大きなトラブルがあったために当初予定していた結晶成長の実験を進めることができず,原料や成長基板の購入量に変更があった。現在,MBE装置が安定し再現性良く成長ができているため,前期において研究を加速的に進めるため,SIMS測定等の委託分析を活用し効率よく研究を進める予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
前期に研究を加速的に進めるため,昨年度使用しなかった予算を積極的にSIMS測定などの委託分析に活用し短期間で多くの情報を得られるように進める。
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