研究課題
塗布熱分解法において原料溶液の高純度化と結晶配向性制御により均一性の高いナノ粒子分散を得た高温超伝導膜の作製に成功した。また、2段階熱処理の導入等の熱処理条件の調整により従来法では実現できなかった2マイクロメートルの厚さを超えるクラックフリーな超伝導厚膜が作製できるようになった。膜厚2.5マイクロメートルの、イットリウムとガドリニウムの混晶系高温超伝導線材の臨界電流特性を広範な温度(4.2Kから77K)及び磁場(自己磁場から17テスラ)領域に亘り実験により系統的に調べた。その結果、ナノ粒子分散が磁場中の臨界電流特性を向上させるための人工ピンニングセンターとして機能していることが明らかとなった。具体的には、例えば、窒素の蒸気圧沸点である77Kでの性能指標に用いられる3テスラでの臨界電流値は、ナノ粒子を導入していない線材に比べて、約2.8倍に向上していることが確認された。我々の提出している物理モデルに基づいて、電流密度-電界特性から臨界電流密度の統計分布を抽出し、比較したところ、ナノ粒子分散を施した高温超伝導線材においては、分布の最小値が上昇するとともに分布の幅が狭まっていることが明らかとなった。これは、超伝導マトリクス内に揃ったピンが導入されていることを示唆するものである。塗布熱分解法に加えて、パルスレーザ蒸着法により作製された高温超伝導線材についても広範な温度、磁場領域に亘る臨界電流特性の計測を行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、均一性の高いナノ粒子分散を実現した高温超伝導線材の臨界電流特性を系統的かつ詳細に計測、解析することにより、分散型ナノ粒子が磁場中の臨界電流を向上させる人工ピンニングセンターとして効果的に導入されていることを明らかとした。また、次年度以降に予定していたパルスレーザ蒸着法により作製された人工ピン導入高温超伝導線材の臨界電流特性の計測を先行して実施している。
当初の予定に準じて研究を遂行する。
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IEEE Trans. Appl. Supercond.
巻: 25 ページ: 6605804
10.1109/TASC.2014.2387054
巻: 25 ページ: 6604204
10.1109/TASC.2014.2380773
http://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K000241/