研究課題
パルスレーザ蒸着法により作製された人工ピン導入高温超伝導テープ線材の電流電圧特性の精密計測を実施した。更に、超伝導層の厚みを0.5マイクロメートルから3マイクロメートル程度まで厚膜化させることにより高い実用性能を実現した高温超伝導テープ線材の電流電圧特性を、広範な温度(4.2Kから77K)及び磁場(自己磁場から25テスラ)領域に亘り系統的に調べた。その結果、人工ピンとしてBaHfO3をドープし、希土類元素にユウロピウムを適用したテープ線材が、他の人工ピン未導入線材や人工ピン導入ガドリニウム系線材に比べ、全ての温度領域に亘って優れた磁場中臨界電流特性を有することを明らかとした。同線材の工業的臨界電流密度(臨界電流を線材全体の断面積で除したもので、線材の実用性能を表す)は、金属系の実用超伝導線材が4.2Kで示す値を、20K~30Kの温度域で凌駕するものであった。また、テープ線材内の構造欠陥の分布と、それらが強い非線形性を有する電流電圧特性に与える影響を明らかとするため、X線マイクロCTによる内部構造観察を実施した。その結果、数十マイクロメートル程度の欠陥が線材面内に局在していること、それらが基板起因で発生していると思われることを明らかとした。これらの欠陥を線材の有効断面積を低減させる電流阻害因子として考え、その統計分布を求めて電流電圧特性の変化を推定したところ、類似の部位をトリミングして得られた実験結果を良く再現する結果が得られた。この成果は、局在する欠陥が線材全体の性能に与える影響を定量的に評価するための指針を与えるものである。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、パルスレーザ蒸着法により作製された人工ピン導入高温超伝導線材の臨界電流特性の広範な温度、磁場領域に亘る精密測定を実施した。また、X線マイクロCTによる内部構造観察も実施した。
当初の予定に準じて研究を遂行する。
実験に要する材料の納入が年度内に間に合わなかったため。
次年度に購入する。
http://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K000241/
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Physics Procedia
巻: 67 ページ: 903-907
10.1016/j.phpro.2015.06.152
IEEE Trans. Appl. Supercond.
巻: 25 ページ: 6605804
10.1109/TASC.2014.2387054