研究課題
塗布熱分解法ならびにパルスレーザ蒸着法により作製された希土類系高温超伝導テープ線材の電界-電流密度特性を広範な温度(4.2Kから77K)及び磁場(自己磁場から27テスラ)領域に亘り精密に測定した。それぞれの線材において、磁場中の臨界電流密度特性を向上させるための人工ピンニングセンターを導入しており、塗布熱分解法ではBaHfO3ナノパーティクルが、パルスレーザ蒸着法ではBaHfO3ナノロッドが形成されている。両者の垂直磁場中における磁場中臨界電流密度特性を比較すると、弱磁場中においては塗布熱分解法の方が、強磁場中ではパルスレーザ蒸着法の方が高い臨界電流密度を有していることが明らかとなった。この傾向は計測した全ての温度領域で確認された。未測定領域を含めた特性把握のために、我々の提出している物理モデルに基づき電界-電流密度特性の温度磁場依存性の定式化を行ったところ広い温度磁場領域に亘り定量的に良く一致することが確認できた。温度、磁場によって複雑に変化する非線形な電界-電流密度特性の定式化は、超伝導応用機器の最適設計に大きく資するものである。また、これまで得た実験結果をまとめ、液体窒素温度域(65Kから77K程度)の臨界電流と各種超伝導応用機器の運用が検討されている液体ヘリウムフリーの低温域(20Kから30K程度)の磁場中臨界電流との相関について調べた。その結果、低温の実用域に相当するコレクティブ・ピンが支配的な領域を指標とすると良い相関が得られることを見出した。例えば77K、1テスラの臨界電流密度は低温磁場中のJcの評価基準として有用である。この知見は、性能向上とともに経済的、技術的に計測が困難になりつつある低温磁場中の臨界電流値を簡易的に推定する手法として、特に線材開発に対して有用なものである。
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Superconductor Science and Technology
巻: 30 ページ: 025022
doi:10.1088/1361-6668/30/2/025022
http://hyoka.ofc.kyushu-u.ac.jp/search/details/K000241/