研究課題/領域番号 |
26420275
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
寺田 教男 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (20322323)
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研究分担者 |
小原 幸三 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (10094129)
奥田 哲治 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (20347082)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超伝導材料・素子 / 表面・界面物性 / 薄膜 / レアアース・レス |
研究実績の概要 |
高い超伝導転移温度を有するととも、構成元素にレアアースを含まない、成長温度が低いなどの優れた特徴を持つが特性発現領域がエピタキシャル成長の初期部分に限定されるため高Ic化が課題であった(Cu, C)系高温超伝導薄膜の改質のための要素技術の開発に取り組んだ。 1)(Cu, C)-1201相を基調とする人工積層構造における超伝導発現の起源が、相互にエピタキシャル成長する1201相と無限層構造:MCuO2 (M:アルカリ土類元素)との間の界面における圧縮性歪みにあることを考慮して、まず、SrTiO3基板上に歪みエピタキシャル成長する無限層構造層の面内格子定数が層厚によりできることを利用して、これを下地層とすることで1201層下側界面の歪みを最適化した。これにより40 K以上のゼロ抵抗温度を再現性良く実現した。2)また、最適化された1201層上に成長させる無限層構造からなる挿入層の複合化を試み,SrCuO2/CaCuO2 2段複合化後もエピタキシャル成長が維持されることを確認した。3)続いて、(1201層/複合挿入層)繰り返し構造の伝導特性と挿入層構造の関係を調べ、複合化をしない従来の積層構造では2周期目以降の1201層が高抵抗化し超伝導性が劣化していたのに対し、低抵抗・超伝導特性が維持されることが見出された。 以上の結果は、研究目標である(Cu, C)超伝導薄膜の高Ic化に繋がる成果である。 また、単一ターゲットを用いる薄膜成長にも着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主要課題は、独自に見出した(Cu, C)-1201レアアース・レス超伝導薄膜を基幹とする積層構造に注目し、その微視的構造の制御により、積層回数を増大させても超伝導特性が劣化しない条件を見出すこと、その特性の極限特性を見極めること及び多層型(Cu, C)系の実用的作製技術を開発することにある。 本年度の成果は、この系における超伝導性の期限となっている1201層/無限層構造層間のヘテロ界面における界面歪みの精密制御手法を確立したこと、および、その適用による界面制御により繰り返し積層構造における特性劣化の抑制の足掛りをえたこととして位置づけられる。これらは研究目標である(Cu, C)超伝導薄膜の高Ic化に繋がる成果でまた、多層型(Cu, C)系の同時堆積による成長に向けた装置改造に成功し、高酸素圧雰囲気・精密ガス種制御下での成長により関連構造の成長に成功している。これらから、順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
1)複合挿入層/(Cu, C)-1201界面における歪みは各層の層厚・成長条件に依存するため、まず影響の大きい成長温度、層厚分配と超伝導特性の関係を明らかにする。このとき、in-situ超伝導特性の評価と、ホール係数測定を並行して行う。また、[2]試料全体の臨界電流密度を評価することで、より多くの積層単位で超伝導が発現する条件を明らかにする。続いて(3)当グループが多層型Tl系で見出した高Tc (133 K)の発現機構[単位胞内電位分布制御による高酸化状態電荷供給層からCuO2面へのホール再分配;(Cu, C)系も類似の始状態を持つ]を(Cu, C)系での発現に向けた構造制御を実施することで、この系の薄膜における超伝導特性の極限を追求する。以上により、(Cu, C)系を基調とする積層構造をレアアースレス・無毒性の高温超伝導薄膜材料として確定し、その作製技術の確立にむけた研究を実施する。
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