研究実績の概要 |
高い超伝導転移温度を有するとともに、構成元素にレアアースを含まない、成長温度が低いなどの優れた特徴を持つが特性発現領域がエピタキシャル成長の初期部分に限定されるため高Ic化が課題であった(Cu, C)系高温超伝導薄膜の改質のための要素技術の開発に取り組んだ。1)超伝導を発現する1201層の複数回成長のための鍵が下地となるSrCuO2バッファ層をステップフローモード成長の実現にあることを明らかにし、そのための下地層成長温度領域(~495℃)を確定した。1201層の成長温度が520℃であり、バッファ層の最適成長温度が500℃未満であったことと併せて、当該超伝導薄膜は高温超伝導薄膜材料中で最も低いレベルの成長温度で形成可能なことが確認された、また、バッファ上の1201相において40K級の超伝導が再現性良く発現する条件を確定した。2)この超平坦バッファ層上に、1201層の超伝導発現の起源である挿入層との界面歪みを上層で保持することに有効なことを前年度に見出したSrCuO2/CaCuO2無限層構造を挿入層として、1201層の複数回積層を行ったところ,積層繰り返しが3回以上でも各層の低抵抗・超伝導特性が実現することを確認した。4)また、単一ターゲットを用いる薄膜成長手法の開発を進め、多層型相における電荷供給層のCu欠損率と欠損を埋めるCO3基の濃度を決める膜成長時のCO2分圧の二次元的最適範囲を決定した。これにより、1201層より高い超伝導臨界温度を有する多層型膜が単一ターゲットから形成可能なことを確認した。以上の結果は、研究目標である(Cu, C)超伝導薄膜の高Ic化、実用的作製技術の開発として位置付けられる成果で有る。
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