研究課題/領域番号 |
26420276
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
永瀬 隆 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00399536)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有機トランジスタ / 有機メモリ / 塗布型有機半導体 |
研究実績の概要 |
有機薄膜トランジスタのフレキシブルデバイス応用において、溶液プロセスから作製できる不揮発性有機メモリの開発が不可欠である。電荷蓄積型の有機トランジスタメモリはフレキシブルメモリの一候補として開発が進められているが、その実用化には溶液プロセスへの移行や低電圧化等の特性改善が求められている。本研究では、溶液プロセスで作製が可能な高い動作性能を有する電荷蓄積型有機トランジスタメモリの開発を目的として研究を進めている。 平成27年度は、溶液プロセスを用いた新たな電荷蓄積層としてフローティングゲート(FG)として機能するナノ微粒子や低分子半導体を探索し、塗布法により有機トランジスタメモリを作製し、基礎特性を評価した。その結果、Siナノ粒子とフラーレン誘導体を用いることで、電荷蓄積によるメモリ特性を得られることが分かった。特に、フラーレン誘導体を用いた場合には、可溶性p型有機半導体をチャネル層として有するトップゲート有機トランジスタ上への絶縁性高分子/フラーレン誘導体混合膜の塗布積層という簡易的な溶液プロセスによって、電子蓄積による良好な書込特性や比較的長時間の保持特性、リライタブルなメモリ特性が得られることを明らかにできた。 また、n型有機半導体をチャネル層とする有機トランジスタメモリの開発を行うため、幾つかの可溶性n型有機半導体を用いて有機トランジスタを作製した。その結果、高動作安定性および高移動度を有するトップゲートn型トランジスタを開発できた。現在、開発した有機トランジスタメモリの動作機構の解明や特性改善に向けて、他のFG材料や電荷蓄積層、電荷輸送層を用いた有機トランジスタの作製および特性評価を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究目標としていた溶液プロセスを用いた新たな電荷蓄積層の開発に関して、幾つかの材料やデバイス構造で検討を行い、フローティングゲート型有機トランジスタを簡易的な溶液プロセスによって作製可能であることを明らかにできた。また、n型有機トランジスタを用いたメモリ作製に向けて、塗布作製が可能な高性能トップゲートn型有機トランジスタを開発することができた。 第二の目標として挙げていたメモリ性能向上については作製した有機トランジスタメモリで閾値電圧シフト量や保持時間に関しては比較的良好な特性が得られることを明らかにできたが、消去・書込電圧の低減についてはまだ課題が残っている。 有機トランジスタメモリのデバイス構造に関しては当初の計画よりも簡易的な構造で実現できたことから、他の材料での検討が順調に進んでいる。また、塗布プロセスによるn型有機トランジスタでは高い動作安定性、短チャネルを縮小化した際に1 cm^2/Vsを超える高い移動度が得られており、低電圧化に必要な有機トランジスタのゲート絶縁膜の薄膜化については有益な知見が得られている。これらの成果から、全般的には研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、引き続き他の有機フローティングゲート材料や有機半導体層での作製、短チャネル化やゲート絶縁膜の薄膜化を進め、本研究で開発した有機トランジスタメモリの動作機構を明らかにするともに、書込・消去電圧の低減や保持特性の改善などのメモリ性能の向上を図っていく。併せて、他の電荷蓄積層やデバイス構造の検討も行い、簡易的な溶液プロセスで作製が可能な有機トランジスタメモリ素子を実現する。また、メモリ回路の形成プロセス開発や光照射等に対する機能性を調べ、多重書込やセンサ応用の可能性を探る。 これらの結果から、材料、素子構成、作製プロセスの最適化を行い、高性能化や高機能化を達成し、塗布・印刷法が可能な電荷蓄積型フレキシブルメモリ回路を開発する。
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