研究課題/領域番号 |
26420278
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研究機関 | 千葉工業大学 |
研究代表者 |
脇田 和樹 千葉工業大学, 工学部, 教授 (80201151)
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研究分担者 |
三村 功次郎 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40305652)
沈 用球 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20336803)
佐藤 宣夫 千葉工業大学, 工学部, 教授 (70397602)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | タリウム系化合物 / ナノ空間変調構造 / 走査型プローブ顕微鏡 / 近接場光顕微鏡 / ナノドメインの可視化 |
研究実績の概要 |
我々はナノ空間変調構造をもつTlInSe2バルク結晶への光照射によりシリコン結晶やガリウム砒素結晶では見られない極めて大きな体積膨張変化を観測した。TlInSe2結晶の形状変化は擬一次元結晶構造による構造柔軟性だけでは説明できず、構造相転移もその原因と考えられる。 本研究の目的は、タリウム系化合物、特にTlInSe2結晶の構造相転移による走査型プローブ法を用いた結晶構造変位によるドメインの可視化を試みるとともに、光照射による巨大体積膨張の原因および構造相転移機構との関係を明らかにする。また、ナノ変調構造のモデリングから電子状態について解析を行い、角度分解光電子分光法やエリプソメトリー法による測定結果を用いて検証する。さらに、TlInSe2結晶の光照射や電圧印加による巨大体積膨張を活かした高効率熱マイクロアクチュエーターなどのMEMSへの応用について検討する。 平成27年度では環境型プローブ顕微鏡にターボ分子ポンプを取付け、高真空環境下で110Kでの原子間力顕微鏡およびケルビフォースプローブ顕微鏡測定が可能となった。その結果、室温及びコメンシュレート相となる110 Kにおけるケルビンフォースプローブ測定により顕著ナノスケールの像は観測できないが、温度差により仕事関数(表面電位)の振れ幅に差がありナノドメインを観測している可能性がある。また、チップ増強ラマン測定において、参照試料としてナノチューブの測定を行っており、ある程度の再現測定は可能となった。 エリプソメトリーのよるタリウム化合物の低温測定も進んでおり、コメンシュレート相とノーマル相の電子状態との対比からTlInSe2結晶の電子状態を解析している。また、第一原理計算によりTlInS2結晶の低温によるナノ空間変調構造について検討しており、一部その成果を論文にまとめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高真空低温におけるプローブ顕微鏡測定において、平成26年度まではチャンバー内の水滴による直径40nmの粒子が付着していたが、平成27年度はこの問題点も解消できた。従って、タリウム化合物表面のプローブ顕微鏡測定が可能な状態となっている。 また、チップ増強ラマン測定においても、カーボンナノチューブの測定が可能となり、ナノ領域の散乱光や発光の計測が可能な状態である。 さらに、エリプソメトリーによるタリウム化合物の低温測定による電子状態の解析も進行しており、平成27年度から取り掛かった第一原理計算により電子状態の解析と合わせて検討している。
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今後の研究の推進方策 |
環境型プローブ顕微鏡装置を用いての原子間力顕微鏡測定およびケルビンフォースプローブ顕微鏡測定において、自発分極によるナノドメインの明確な観測はまだできていないが、その形跡と思われる信号は観測している。今後、信号のノイズ低減を図るためにプローブ顕微鏡装置を改造し振動防止装置を設置すると共に、信号処理の観点からノイズ低減処理を行い、ナノドメインを観測する。 また、チップ増強分光測定条件の最適化を図ることにより、ナノドメインの分光観測を試みると共に、平成28年度からプラズモンナノセンサーを用いてナノドメインの観測にもトライする。 第一原理計算によるナノ空間変調構造の解析をさらに進め、構造相転移が起こる原因の解明やエリプソメトリーや角度分解光電子分光法により電子状態との対応について検討する。 さらに、TlInSe2を用いた熱マイクロアクチュエーターの最適設計を行い、その性能の可能性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
測定系装置の改造部品代および旅費として計上していたが、学会発表および測定計画からその一部を平成28年度に執行することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
応用物理学会秋季学術講演会での成果発表のための旅費およびエリプソメトリー装置の低温測定のための真空部品購入費および環境型プローブ顕微鏡装置改造のための真空部品購入費として執行する予定である。
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