1.MgSe/ZnCdSe共鳴トンネルダイオードの作製に成功した。素子は1.2nmのZnCdSe井戸層を1.2nm厚のMgSe二重障壁層で挟み、更にその上下にn形ZnCdSeエミッター層と同コレクター層を配置した構造とした。同構造をInP基板上に分子線エピタキシー法を用いて作製した。その後、上部n形ZnCdSe層上にAl電極、基板側にAu/Sn電極を各々形成した。素子の電圧電流特性を室温で評価したところ、印加電圧が0.8V付近において明瞭な負性微分抵抗が見られ、共鳴トンネル効果が確認された。負性微分抵抗が現れる近傍のピーク電流密度は約0.4kA/cm2であり、ピークバレー比は1.37であった。また、複数回の測定においても毎回安定した負性抵抗が得られ、素子の劣化は見られなかった。 2.光デバイスのn側構造の電気特性について調べた。n形ZnCdSeバッファー層とnクラッド層から成る光デバイスのn側のみの構造を作製し、電気特性を評価した。ここでは、nクラッド層としてMgSe/ZnCdSe超格子とMgZnCdSe混晶の場合について比較検討した。その結果、混晶の場合に超格子と比べ微分抵抗が1/5以下に低減し、クラッド層として適していることが分かった。一方、超格子と混晶のどちらの電圧電流特性においても電流の立ち上がりが3V程度のショットキー性が見られ、これが光デバイスにおける高い印加電圧の原因の一つであることが分かった。このショットキー性はバッファー層とnクラッド層の間のヘテロ障壁によるものと考えられる。そこで、このヘテロ障壁の影響を低減し、ショットキー性をオーミック性に改善するため、バッファー層とnクラッド層の間にZnCdSe/MgZnCdSe階段型超格子を導入する手法を提案した。実験によりその効果を確かめた結果、階段型超格子を導入することでショットキー性の改善が得られた。
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