研究実績の概要 |
我々は高周波超音波が発振可能な超音波厚さ計により、圧電セラミック円板の厚み方向へ伝搬する縦波・横波速度を測定し、その弾性定数(ヤング率・ポアソン比等)を簡便に求める方法を開発している。本方法をこれまで①チタン酸ジルコン酸鉛系圧電セラミックスでの焼成雰囲気効果(焼成プロセスの解析)、②未分極セラミック円板のDC分極電界依存(分極プロセスの解析)及び③弾性定数の観点からの高圧電性をもつ非鉛系圧電材料の組成探索(組成探索法の開発)へ展開してきた。今回、焼成プロセス、特に、焼成温度の異なるチタン酸バリウム圧電セラミックスの縦波・横波速度及び弾性定数を測定し、焼成温度と圧電・弾性定数との関係を明らかにした。 チタン酸バリウム(BT)原料として粉末粒子径の異なる2種類、BT02(平均粒子径0.2 μm)とBT05(平均粒子径0.5 μm)とを用い、1,300-1,350℃(BT02)及び1,300-1,360℃(BT05)で2時間焼成後、60℃, 2.0 kV/mm, 30 minでDC分極処理を行った。誘電・圧電特性を測定後、超音波厚さ計により、円板試料の縦波速度(VL)・横波速度(VS)を測定し、ヤング率(Y)・ポアソン比(σ)を求め、その焼成温度依存を調べた。 分極前後のVL・VS・Y・σの焼成温度依存より、VLは分極処理の有無によらずBT02では1,340℃でピークを取るが、BT05では単調に増加する。この結果は径方向の電気機械結合係数(kp)の焼成温度依存と同傾向であった。一方、VSはBT02, BT05共単調に上昇するが、分極後、BT02では全温度範囲、BT05では1,320℃以上で低下した。これは1,320℃以上でのkpの急激な上昇に対応していた。又、Yは焼成温度と共に上昇したが、1,320℃以上で分極後低下した。更に、σはkpが上昇する焼成温度範囲(>1,320℃)で分極後、大幅に上昇した。以上の結果は、これまでの検討結果と一致し、kpの上昇はYの低下、σの上昇に繋がっていた。
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