研究実績の概要 |
本研究では電解質を薄膜化した固体酸化物形燃料電池(SOFC)を作製し、その作動温度を低温化することを目的とした。その低温化実現のため、本研究では、Pdメッキした多孔質のステンレス基板に電解質薄膜を形成した全く新しい構造のSOFC構造を試作・評価した結果、400℃という極めて低い温度での発電を確認した。しかし、その発電量は数mW/cm2と目標とする発電量の1/100程度であり、本SOFCの実用化のためにはさらなる発電特性の向上が必要であると結論された。 本結果における低出力の原因について検証したところ、低出力の原因は電解質膜にあるのではなく空気極にあることがわかった。これは今回使用した空気極が緻密体であり、反応場への酸素の供給が不足していることに起因するものであった。これは、従来の空気極材料((La,Sr)(Co,Fe)O3(LSCF))はステンレス基板の耐熱限界である700℃では固着しなかったため、やむなく緻密な膜しか得られないが低温で成膜可能なパルスレーザー堆積法を用いて作製したためであり、700℃以下のプロセス温度で空気極を作製する技術が必要であることがわかった。 しかし、従来型SOFCで用いられる空気極材料であるでは700度以下での空気極形成が困難であったため、他の酸化物系導電体材料の空気極応用について検討した。その結果、ゾルゲル法を用いて700℃以下のプロセス温度で伝導性の高いLaNiO3(LNO)薄膜を多孔質で形成することに成功した。現在、本LNO薄膜を用いたSOFCの試作を実施している段階である。 またSOFC関連以外の成果として、スパッタ法で作成したプロトン伝導薄膜はPt/TiOx/SiOx/Si基板上に高度に(110)配向することを新たに見出しており、ペロブスカイト薄膜の配向制御用シード層として有用であることを見出し、その知見を論文化した。
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