半導体デバイス型水素センサの動作機構に関して、実験・理論的検討を通して、一般的に普及しているダイポールモデルとは異なる新規のモデルを提案した。窒素および水素雰囲気中において、Pt-AlGaN/GaNショットキーダイオード(SBD)をインピーダンス測定した結果得られたナイキストプロットを解析したところ、水素導入後においても、ダイポール層の存在に伴うRC成分を示す新たな半円が現れないことがわかった。また、第一原理計算によって得られたPd-SiO2界面の面内平均ポテンシャルの深さ方向分布を解析した結果、水素吸着前後で面内平均ポテンシャルに大きな変化が見られなかった。これらの結果より、従来モデルで予想されているように、界面において水素がダイポール層を形成することは考えにくい。これまでの検討で、Pt-GaN SBDの電極と半導体界面に様々な絶縁膜を挿入して水素応答を調べた結果、挿入する絶縁膜の種類によって、水素応答が大きく変化することがわかている。さらに、Pt-SiO2-GaNダイオードの電流輸送機構を解析した結果、窒素中ではFowler-Nordheim tunnelingであったが、水素中ではPool-Frenkel emissionに変化している。以上の結果より、従来提案されている界面ダイポールモデルは誤りで、水素による絶縁膜の物性変化が半導体デバイス型水素センサの動作機構の本質であることが予想される
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