研究課題/領域番号 |
26420288
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
川津 琢也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (00444076)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電界効果トランジスタ / n-AlGaAs/GaAsヘテロ接合 / ショットキバリア光検出器 / 2次元電子 |
研究実績の概要 |
ショットキバリア光検出器は、半導体と金属薄膜により構成されており、検出エネルギーは、半導体のバンドギャップではなく、半導体‐金属ゲート界面に生ずるショットキ障壁により決められる。このため、幅広い波長の光検出が材料の選択によって可能となる。ショットキバリア光検出器では、光電流が素子に対して垂直、すなわち、基板から表面金属あるいはその逆方向に流れる。しかし、この垂直方向の電流は、低移動度キャリアを持つドープ基板を通る必要があり、ノイズの要因となる。また、垂直電流は集積回路との相性も悪い。本研究では、ショットキゲートを光照射することにより、面内方向の電流(光ガルバノ電流)が、n-AlGaAs/GaAsヘテロ接合電界効果トランジスタの高移動度2次元電子チャネルに生じることを見出した。 測定に用いた試料は、変調ドープn-AlGaAs/GaAsヘテロ接合である。試料はホールバーにプロセスし、波長808nm、1.4 mWのレーザーを照射しながら、ソースとドレイン間の光電流を室温で測定した。その結果、レーザーがゲートの左半分に照射されている時は、左から右へ、右半分に照射されている時は、右から左へ向かう電流が生じることがわかった。面内電流は、レーザー位置に対して線形に変化し、ゲートの端で最大値約0.56μAを示した。 ゲート金属にショットキ障壁よりも高いエネルギーを持つ光を局所的に照射すると、電子が金属ゲートから2次元チャネルに遷移し、チャネルからゲートへの電流が生ずる。一方、電子のゲートから2次元チャネルへの遷移は、ゲート電位を上昇させ、リーク電流を引き起こす。この時、非対称な位置に光を照射すると、電流の非対称な循環が生じ、試料の2次元チャネルに面内電流が発生する。測定で得られた光電流は、連続方程式に基づくモデルと比較し、チャネルに誘起される電流生成のメカニズムを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、平成26年度に予定していたn-AlGaAs/GaAsヘテロ接合電界効果トランジスタの光ガルバノ測定を行った。その結果、ショットキゲートの光照射より、面内方向の光電流(光ガルバノ電流)が生じることを見出し、また、理論との比較から、電流生成のメカニズムを明らかにする目的も達成することができた。当初の予定とは異なるが、この成果は、”区分(2)おおむね順当に進展している”に相当していると考えられる。なお、当初平成27年度に予定していた量子ドットの作製は、実験装置の都合により、平成26年度に前倒しして行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、量子ドットを埋め込んだ電界効果トランジスタの光電流(光ガルバノ効果)の研究を遂行する。平成26年度に作製したような格子数面基板上の量子ドットは、大きな異方性を持つ。そのような異方的な量子ドットにレーザーを照射すると、光吸収の際、近傍の2次元チャネルの電子に運動量分布の異方性が生じ、その結果、面内方向の光電流(光ガルバノ電流)が生じる。平成28年度は、量子ドットを埋め込んだ電界効果トランジスタを作製するとともに、その素子にさまざまな条件でレーザーを照射し、光ガルバノ効果を引き起こすことを試みる。特に、温度やレーザー強度、波長などを変えて、それらが光電流に与える影響を調べる。さらに、平成26年度に用意した理論計算用ワークステーションを用いて、有限要素法を用いた理論的なシミュレーションを実施する。結果を比較することにより、光電流発生メカニズムを明らかにする。
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