電界効果トランジスタの金属ゲート電極に局所的にレーザーを照射することにより、光ガルバノ効果が生じることを示した。ゲート金属にレーザー光を照射すると、電子が金属ゲートから2次元電子チャネルに遷移し、チャネル-ゲート間に電流が生ずる。一方、電子のゲートから2次元電子チャネルへの遷移は、ゲート電位を上昇させ、リーク電流を引き起こす。この時、ゲート上の非対称な位置に光を照射すると、ゲートと2次元電子間に電流の非対称な循環を生じ、ソースからドレインへの試料全体にわたる面内光電流を発生することが判明した。特に、ゲート電極の端をレーザー照射した時、面内光電流は最大となり、その値は約9000nA/mW に達することがわかった。 また、我々は、異方的な量子ドットを埋め込んだヘテロ接合素子に、無偏光のレーザーを照射することによっても、光ガルバノ効果が生じることを見出した。微傾斜GaAs(111)B 基板上には周期的なステップ構造が形成され、その上のInGaAs 量子ドットは、空間的な異方性が著しく大きい。そのような量子ドットをヘテロ接合素子に埋め込み、試料の端面をレーザーで照射すると、異方的な量子ドットとレーザー光が相互作用し、量子ドット近傍の2次元電子チャネルに約75nA/mW の大きな面内光電流が生じることを示した。 また、本研究では、光ガルバノ効果を引き起こす新材料の探索も研究目的の1つであり、(1)GaAs(111)B基板上のInGaAs量子細線と(2)GaSb/GaAsタイプⅡ量子ドットについて、物性評価を行った。その結果、前者は大きな光学異方性を持つことから、また、後者は光励起された電子-正孔対の再結合時間が長いことから、光ガルバノ効果の新材料として有望であることを示した。
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