ネマティック液晶/配向ナノファイバー複合体を構成するナノファイバーの種類、平均直径及び密度を変化させたときの複合体の誘電率の印加電圧依存性を測定した。ナノファイバー材料としてはポリビニルアルコール(PVA)及びポリアクリロニトリル(PAN)を用いた。ファイバー直径や密度の異なる複合体を作製し特性を評価したところ、閾値電圧や飽和電圧がナノファイバー材料に依存するとともに、密度が同じ場合には平均直径が大きいほど、また平均直径が同じ場合は密度が低いほど閾値電圧や飽和電圧が低いことが確認できた。一方、閾値電圧が増加するほど改善が必要である電圧を除去したときの立ち下がり応答時間を短縮できることが確認でき、ナノファイバーの材料、平均直径及び密度の制御により立ち下がり応答時間を制御できることを明らかにした。 また、作製したネマティック液晶/配向ナノファイバー複合体を用いて、透過型のテラヘルツ波位相制御素子を作製した。厚さ188μmの複合体を用いて周波数400GHzにおける位相差は16度であり、同じ厚さの単体液晶の立ち下がり応答時間が230sに対して0.25sと大幅に応答時間を改善できることが確認できた。更に、線路型のテラヘルツ波位相制御素子としてNRDガイドの誘電体部分にPETフィルムで挟んだネマティック液晶/配向ナノファイバー複合体を利用することを検討し、デバイスの特性を評価したところ、周波数300GHzにおいてNRDガイドとして動作することを確認するととともに、電圧印加により約20度の位相変化が確認でき、そのときの応答時間が約0.6sであることが確認でき、ネマティック液晶/配向ナノファイバー複合体を用いた線路型テラヘルツ波移送制御素子が実現できた。
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