研究課題/領域番号 |
26420291
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研究機関 | 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工 |
研究代表者 |
立木 隆 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 電気情報学群, 准教授 (60531796)
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研究分担者 |
内田 貴司 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, 電気情報学群, 教授 (50531802)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | テラヘルツ波 / 発振素子 / 銅酸化物高温超伝導体 |
研究実績の概要 |
酸化物高温超伝導体に内在する固有ジョセフソン接合を用いたテラヘルツ波発振素子の安定化と高出力化を目的に、当該年度では、昨年(26年)度の(1)発振持続条件の検討と(2)バイアス安定化回路の設計・製作に加えて、新たに(3)容量性負荷を付与した素子の設計・製作と(4)発振線幅の評価を進めた。 (1) 発振持続条件の検討・・・理論的検討の結果から、発振が持続しなくなる“ゼロ抵抗状態への戻り”を抑制する条件を見出すことは難しいことが分かってきた。その代り、素子内の一部の接合がゼロ抵抗状態に戻ったとしても、バイアス電圧を増加方向に制御することにより発振出力の低下をある程度抑制できることを数値シミュレーションにより見出した。 (2) バイアス安定化回路の設計・製作・・・26年度の研究により安定化電源を用いることでバイアス電圧の時間変動を低減できたため、より設定分解能が高く、高速動作が可能な電源を新たに導入した。これによりバイアスの安定化がソフトフェア制御で可能であると考えられる。 (3) 容量性負荷を付与した素子の設計・製作・・・素子材料であるBi系高温超伝導体の酸素(キャリアドープ)量をアンダードープ側に制御し、並列コンダクタンス成分を減少(並列抵抗成分を増加)させることにより等価的に容量成分を増加させた。この試料から製作した発振素子は、予想に反して発振が時間的に不安定であることが放射電力測定より分かった。素子の並列抵抗成分の増加による発熱のため、素子内の過剰な温度上昇が生じたことが原因であると考えられる。 (4) 発振線幅の評価・・・既存の分光強度計よりも高い分解能を有するNbを用いた超伝導ミキサーによる高い精度の線幅測定を行うため、SISトンネル接合の製作を行い、ミキサーに利用可能な特性が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に述べた4つの実施項目において、それぞれ結果が得られてきているが、(3)バイアス安定化回路の設計・製作において新しい電源の導入の遅れと開発環境の整備のため、遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
遅れが生じているバイアス安定化を優先的に行う。具体的には素子に印加するバイアス電圧を、新規に導入した電源を用いて精密に調整できる制御プログラムを完成させる。また、素子製作においては、酸素量制御による容量性負荷を付与した素子は、過剰な発熱により発振が持続しにくいことが分かってきたため、素子の排熱効率を向上させる。具体的には、冷却効率が上がるようにこれまでの基板の裏面側冷却から表面側冷却に変更する。更に、発振線幅の評価を27年度に製作したSISトンネル接合を用いたミキサーにより評価する。以上の研究の実施を元に総合評価を行い、その結果を各実施項目にフィードバックして、発振素子の安定性と出力特性の向上を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度購入予定であった制御用ソフトウェアを別途入手できたこと、および当該年度は真空部品や薬品等のストックがあったため、それらを購入しなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。また、当該年度に購入予定であったバイアス制御用コンピュータは、既存の代用品を使用しつつ、スペックを検討中のため、購入に至らなかったことも理由の一つとして挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
物品購入として、当該年度に購入できなかった制御用コンピュータ、また、発振線幅評価用の超伝導ミキサーの測定機器、真空部品や薬品等を購入する予定である。 研究成果の発表として、素子へのバイアス電圧依存性の実験的、理論的検討結果および放射特性の評価に関する成果を「テラヘルツプラズマ振動と固有ジョセフソン効果に関する国際シンポジウム」や「ミリ波と赤外およびテラヘルツ波に関する国際会議」で発表するため、その旅費と参加費を本助成金で支払う予定である。
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