本研究課題では、複数の円形パターン形状の電極及び高抵抗膜を用いた新しい構造の液晶レンズを設計・試作し,①液晶レンズにおける有効なレンズ径を拡大・維持しつつレンズパワー(焦点距離の逆数)の可変幅を拡大すること,遠視・近視または老眼の進行度合いに応じた遠近可変メガネのレンズパワーを矯正するための特性を得るために、②凸レンズ特性内部に凹レンズ特性~凸レンズ特性(逆に凹レンズ特性内部に凸レンズ特性~凹レンズ特性)を制御することを目的としてる。 これまで、円形孔型パターン電極内における軸対称の不均一電界分布に基づき,液晶分子の再配向効果を利用した液晶レンズが提案されている。しかし,液晶層の利用効率が低いという課題がある。多数の同心円状の輪帯電極を用いた液晶レンズが提案され,液晶層の利用効率を改善することができるが,屈折率が階段状もしくは階段状を含む傾斜状となる特徴がある。この問題を解決するため,前年度までの研究で、高抵抗膜と同心円状輪帯電極を有する液晶レンズを提案した。液晶レンズのレンズ径を拡大した場合,レンズパワー(焦点距離の逆数)が有効レンズ半径に対して二乗に反比例して小さくなるため,レンズ特性を良好な状態に保ち,有効レンズ径の更なる拡大と実効的なレンズパワーを増大する必要がある。 そこで、平成29年度の研究では、これまで少数の輪帯電極で滑らかな放物面上の光学位相差分布を実現するために,高抵抗膜及び輪帯電極を用いた液晶レンズを提案し,その電気光学特性について実験を行った。さらに、輪帯電極構造を有する液晶レンズの各電極にそれぞれ適切な値の電圧を加えた場合と,さらに通常よりも大きな電圧を一時的に加えた場合のレンズ径内の光学位相差分布の時間依存性を測定し,応答特性について求めた結果について考察を行った。
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