研究課題
1次元線形右手左手混在進行波型電界効果トランジスタ(以下,CRLH-TWFET)のプリント基板回路試作・評価によって、理論的に予測された分岐構造の実測に成功し、亜臨界ホップ分岐に関連したコヒーレント構造として左手系孤立波の伝搬を確認することができた。前年度に引き続き計測結果を精査した結果、素子特性のばらつきが予想を越えて伝搬特性に影響することがわかった。今年度はその現象理解に注力した。計測によって、近端から入力した試行パルスは損失補償を受け遠端近傍にまでは至るが、唐突に反射し近端に向かう途上で停留化する様子が複数の素子バイアス条件下で確認された。離散性、非線形性、能動性そして非均一性を兼ね備えた波動伝搬の把握は現代的な課題である。結合光導波路やボーズ・アインシュタイン凝縮系を類例とするが電気的な自励発振系での現象理解・応用は前例がない。この側面での理解が果たされれば高次元化は比較的素直である。前年度までの研究実施によって、伝送方程式の縮約を行い実効的な3次5次ギンツブルグ-ランダウ方程式を導出した。このモデル方程式における停留ブリーザーの可動性評価、衝突特性などの数値的評価を進めた。得られた知見をCRLH-TWFETに適用する段階に至っている。一般に非均一性による可動性は高次元において一層抑制的となることが確かめられ、空間的孤立波生成にはむしろ有効に作用するものと理解している。一方、CRLH-TWFETが超臨界ホップ分岐を行うバイアス条件を実証した。この条件下では自励発振を抑止しつつ左手系ソリトンの損失補償を可能とする。3波混合、4波混合、調和共鳴、ソリトン崩壊といった様々な共鳴相互作用は左手系ソリトンを対象とすることで従来にない特性を生む。その実践性向上に資する結果が得られた。
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