研究課題/領域番号 |
26420299
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
藤井 知 千葉大学, 事務局, 特任研究員 (30598933)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 圧電薄膜 / スパッタリング |
研究実績の概要 |
我々の研究グループでは、次世代に必要となる弾性波素子用圧電薄膜、特に、高音速・高圧電性の特徴を持つのScAlN薄膜の形成方法について研究を行っている。これまで進めきたことは、シリコン基板を用い、(1)合金スパッタ装置の成長方法の最適化の実施、(2)その圧電膜の物性及び素子評価である。これまでの結果、ScxAl1-x(x=32及び43%)の合金ターゲットを用いたRFマグネトロン反応性スパッタリング法により、Si(100)面のウエハ上に良好な六方晶系c軸配向性を持つScxAl1-xN薄膜を形成出来ることを確認した。薄膜中のSc濃度は、43at%ターゲットの場合32at%、32at%ターゲットの場合23at%となる。Sc濃度32at%ターゲットの場合、C軸配向とSc濃度ともに30時間以上安定的にScxAl1-xN薄膜を形成出来出来ることを示した。また、素子特性もAlNに比べ圧電特性は5倍以上の大きさを持ち、次世代の弾性波素子の材料として、十分なポテンシャルを持つことが示された。しかしながら、Sc濃度が43at%のターゲットを用いた場合、50時間以上ターゲットを使用すると、六方晶系c軸配向性の薄膜が得られなくなる。その原因について、FIB加工-断面TEMにて分析したところ、ScxAl1-xN /Si界面にScの高濃度の薄膜が形成やアモルファス層が厚いことが分かった。推定される原因としてシリコン基板のチャージアップなどが考えらる。しかし、ScxAl1-xN薄膜形成の成長初期をコントロールすることにより、ScxAl1-xN薄膜の良好な六方晶系c軸配向性を安定的に得られ、SAWフィルタの特性も遜色ないことが分かった。今後、さらなるSc濃度の増加と、ダイヤモンド基板上にScxAl1-xN薄膜形成や、それを用いたSAWデバイスを試作し、その評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ScAl合金スパッタの有効性が示され、通常のRFマグネトロンスパッタリング装置にて、簡便にScAlN薄膜が形成できることを示した。また、Sc濃度が増えれば、熱平衡からScAlN薄膜のC軸配向が困難になるものの、結晶構造の近いシード層の導入により、配向が改善されることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
現状の薄膜中のSc濃度は、ターゲット組成より10%程低い。この原因について設備の改造を含め検討を行い、さらなるSc濃度の向上と、弾性波デバイスにしたときの特性について示して行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年5月の国際学会に合わせて、年度末の2月〜3月に、ナノプラットフォーム事業に参画している産総研や物材機構の装置を利用した。年度末であったため、正確な費用が年度末では、見込めず、越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画通りより、前倒しに進めており、今年度以降、さらに、ターゲットの購入やスパッタリング設備等の改造を含め、本研究が進展するよう進める。
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