研究課題/領域番号 |
26420302
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大河 正志 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90213644)
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研究分担者 |
佐藤 孝 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10143752)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アコースティック・エミッションセンサ / 光導波型センサ / 光集積回路 / ダイヤフラム / 光導波路 |
研究実績の概要 |
【AEセンサの高性能化】 ダイヤフラムサイズ20 mm角・0.145 mm厚のセンサ(#1)とダイヤフラムサイズ20 mm角・0.21 mm厚のセンサ(#2)を試作した。まず,試作センサに時間幅の異なる音波パルス(音圧2 Pa)を印加し,時間幅と応答特性の関係について考察した。測定では,印加音波の周波数を共振周波数に設定し,時間幅を1周期から100周期まで変化させた。時間幅が短い場合,応答が定常状態に至らないため,応答信号の最大値を評価指標とした。その結果,出力の最大値は時間幅に対して指数関数的に増加し,その指数は両試作センサともほぼ同じであるという結果を得た。次に,試作センサに音圧の異なる音波(連続波)を印加し,音圧とセンサ出力の関係について考察した。測定では,印加音圧を0.1 Paから2.0 Paまで変化させた。両試作センサ共に,センサ出力が印加音圧に比例する結果が得られたが,その比例係数には測定毎のばらつきがみられ,AEパラメータ推定のときの支障になることが明らかになった。ところで,#2の方が,センサ感度が低いため,比例係数が小さくなるはずであるが,実験では相異なる結果が得られ,さらなる考察が必要であることも分かった。 【AE検出・監視システムの構築及び評価】 本サブプロジェクトでは,試作センサの時間幅および音圧に対する応答特性と理論解析を基に,センサ信号からAE特徴量を推定・算出するシステムをWindowsアプリケーションとして製作することとした。本システムは,大きく分けて,「雑音処理」と「AE特徴量算出」の2つの機能からなる。システム機能の検証のため,振幅,時間幅,雑音が異なる模擬信号を作成し,評価を行ったところ,ステップ状パルスという限定的な条件の下ではあるが,AE特徴量算出の可能性を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は,本研究室で考案した「感度を維持したダイヤフラム縮小則」を適用して,共振周波数の高周波化について考察を行う予定であったが,材料上の制約で,ダイヤフラム辺長は20 mmのままで,ダイヤフラム厚を0.145 mm(#1)から0.21 mm(#2)と厚くすることとした。これにより,共振周波数の理論値は3.3 kHzから4.8 kHzと高くなるが,感度は理論上ほぼ半減する。ちなみに,センサ#2の共振周波数の実測値は4.2 kHzで,理論値より低めの値となった。実測した共振周波数の音波を使い,試作センサの応答特性の印加音波パルス時間幅依存性および印加音圧依存性を測定した。音波パルス時間幅依存性では,出力が指数関数的に増加する共振現象特有の過渡的現象が確認でき,その増加率はダイヤフラムサイズに依存しないことが分かった。また,印加音圧依存性では,予想通り,出力が音圧に比例することが分かった。以上のことから,感度低下はあったものの,当初の目的である共振周波数の高周波化を実現し,センサ信号からAE信号を推定するための基礎的知見も得ることができた。 もう1つの主たる課題であるAE検出・監視システムの構築及び評価については,「印加音波パルス時間幅に対するセンサ応答特性」のほか,「印加音圧に対する応答特性」の理論特性及び実験結果を基に,狭帯域型センサのセンサ信号から音波パルスの時間幅と音圧を推定するシステムを構築した。そして,本システムに,大きさの異なるガウス雑音を付加した模擬信号を入力し,AE信号推定が可能な条件を明らかにした。 以上のように,広帯域型センサへの取り組みについては今後の課題であるが,狭帯域型センサに対する1年目の目標は達成できており,「(2) おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
【AEセンサの高性能化】 平成26年度は,狭帯域型AEセンサのダイヤフラム厚を変えることにより共振周波数の高周波化を図ったが,ダイヤフラム辺長の縮小や高次共振モードの利用などによっても高周波化が可能と考えられ,センサを試作し,その応答特性について考察を行う。また,ダイヤフラム材料や導波路材料の見直しによる高周波化も課題として残っており,本センサ構成に適した高ヤング率材料や高光弾性係数材料をリストアップし,センサ感度等について数値解析を行う。さらに,広帯域AEセンサについては,狭帯域センサにおける数値解析手法を流用し,考察を開始する。広帯域型センサでは,周波数特性も重要となるが,有限要素法による振動解析も行う。 【AE検出・監視システムの構築及び評価】 引き続き,平成26年度版プロトタイプの機能検証のため,雑音を付加した模擬信号を使い,AEパラメータ推定性能について詳細な考察を行う。また,平成26年度に開発したプロトタイプをベースにして,閾値処理,フィルタ処理,AEパラメータ推定などの機能を強化し,任意のAE波形に対する処理も可能となるよう,システムの改善を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の研究をほぼ終えた時点での残金で,物品費として使うにも少額で,平成27年度の経費と合算して使用する方が,研究遂行上有効であると判断したため。
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次年度使用額の使用計画 |
少額であるため,平成27年度の経費と合算して,薬品および電子部品等の購入に充てる予定である。
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