研究課題/領域番号 |
26420305
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
武田 正典 静岡大学, 工学研究科, 講師 (80470061)
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研究分担者 |
小嶋 崇文 国立天文台, 大学共同利用機関等の部局等, 助教 (00617417)
島影 尚 茨城大学, 工学部, 教授 (80359091)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カイネティックインダクタンス / 非線形性 / マイクロ波伝送特性 |
研究実績の概要 |
本研究では,低消費電力テラヘルツ帯極低雑音増幅器の実現に向け,進行波型超伝導パラメトリック増幅器の開発を行っている.平成26年度及び27年度の2年間でマイクロ波帯でのスケールモデル実験を計画している. 平成26年度は,進行波型超伝導パラメトリック増幅器開発のための基礎検討を行った.このタイプの増幅器においてパラメトリック利得を向上させるためには,強い超伝導カイネティックインダクタンス非線形性が必要である.そのため超伝導コプレーナ伝送線路にポンプ波を印加した場合に生じる超伝導カイネティックインダクタンス変化について理論解析を行った.その結果,強い超伝導カイネティックインダクタンス非線形性を得るためには,伝送線路におけるストリップ導体の極薄膜化と細線化が必要であることが判明した.理論解析の正当性を確認するため,4K-GM冷凍機とベクトルネットワークアナライザを用いて作製した超伝導コプレーナ伝送線路の伝送特性を周波数1-10 GHzにわたり測定した.またポンプ波の代わりに直流電流をバイアスティにより外部から超伝導コプレーナ線路に印加した.その結果,薄膜の臨界電流よりも小さい電流を印加した場合に,大きな伝送損失を招かず(< 0.5 dB),超伝導カイネティックインダクタンス変化による位相変化を確認した.細線化プロセスがまだ確立しておらず,今回ストリップ幅4 umの超伝導コプレーナ線路を測定に用いた.そのため超伝導カイネティックインダクタンス変化量は3%程度と小さかったが,理論解析値と概ね一致している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,①超伝導パラメトリック増幅器に使用する薄膜の超伝導特性評価,②カイネティックインダクタンス非線形性の理論解析,③超伝導コプレーナ線路の作製とカイネティックインダクタンス非線形性評価,の3点を計画目標に挙げた.項目①については超伝導転移温度,抵抗率,磁場侵入長や臨界電流密度など増幅器設計に必要な物性値を取得した.項目②で作成したプログラムを基に超伝導コプレーナ線路を作製し,マイクロ波帯で伝送特性を測定した.外部からコプレーナ線路に電流を印加することで,インダクタンス変化による位相変化を確認することができた.位相変化量から見積もったカイネティックインダクタンス非線形強度は増幅器動作のためにはまだ小さいが,測定値は理論解析と比較的良く一致する傾向を示しており,全体としておおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
伝送線路のストリップ部の細線化によりカイネティックインダクタンス非線形性を向上させるとともに,超伝導パラメトリック増幅器設計に着手する.実際に増幅器を作製し,マイクロ波帯で増幅器利得の評価を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の課題である低雑音超伝導パラメトリック増幅器の実現に向けて,本年度に超伝導カイネティックインダクタンス非線形性の評価を行った.その非線形性は確認できたものの,非常に長い伝送線路を作製しマイクロ波伝送実験から評価したため,作製プロセスの不安定性から長距離にわたり均一な線路の作製が困難であった.そのため精密に測定するため,短い線路でも非線形インダクタンスが評価できる共振器実験を追加実験として行う計画に変更した.
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次年度使用額の使用計画 |
繰越した助成金は,共振器作製のためのフォトマスク作製費及び基板購入費に充てる.
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