研究課題/領域番号 |
26420306
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
赤池 宏之 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20273287)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電子デバイス・機器 / 超伝導材料・素子 / スピンエレクトロニクス |
研究実績の概要 |
本年度は位相制御超伝導スピントロニック集積回路を実現すべく、磁性パターンを用いた超伝導巨視的波動関数の位相制御の検討を行った。磁性材料には、磁化の大きさを制御する観点からPdNi合金を選択した。その結果、Pd中のNi濃度の制御及び、試料を冷却する際に磁場を印加する有磁場冷却を導入することにより、上記波動関数の位相を制御できることがわかった。この位相制御法の有効性を実証するために、単一磁束量子回路や磁束量子パラメトロン回路などの超伝導回路を採り上げ、それら回路の高性能化・高機能化に向けての検討を開始した。 位相制御法の別のアプローチとして、強磁性障壁層を含んだ磁性ジョセフソン接合を回路内に導入にすることが挙げられる。そのため、PdNi層を障壁とした磁性ジョセフソン接合の作製を行い、その接合特性のチップ内均一性を評価した。この均一性は、集積回路への応用上極めて重要となる。接合構造としては、均一性評価を容易にするため、絶縁層を接合障壁層に含んだものとした。障壁層形成条件の検討の結果、磁性層の膜厚を12nmまで増加させても、特性ばらつきを、目標となる標準偏差2%以内に抑えることに成功した。 システムの省電力化に繋がる超伝導回路の高温動作化に向けて、超伝導体NbTiNの導入の検討も行った。NbTiNは下部層の結晶性や段差部に対して比較的良好な超伝導性を示すため、多層構造を必要とする集積回路への応用に関して重要な材料となる。本年度は、成膜条件の検討を行うとともに、抵抗率やストリップ線路のインダクタンスの評価から磁場侵入長の評価を行った。その結果、従来のNbに比べ、NbTiNの優位性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
位相制御超伝導回路において重要となる巨視的波動関数の位相シフト量に関して、磁性バターン中の磁化を用いて制御する手法の確立に成功した。また、磁性ジョセフソン接合の作製評価においても、集積化が可能なレベルの接合作製に成功しているため。
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今後の研究の推進方策 |
磁性パターンを用いた位相制御法の確立を受け、磁性パターンを導入した超伝導回路の高性能化・高機能化に取り組む。位相制御の効果の一つは回路の機能の切替である。その原理実験も含め検討を進める。一方、磁性接合では、位相差πを生み出すπ接合の実現に向けて検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の予算に関して効率的に使用することができたため残額が生じた。この分は、27年度の計画のために使用する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
使用計画として、ターゲット材、フォトマスク作製、基板材料、化学薬品、デバイス作製用プロセスガス、液体ヘリウムなど試料の作製評価に関わる消耗品、成果発表や情報収集のための学会参加費や出張旅費、論文投稿料や英文校正料を予定している。
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