研究課題/領域番号 |
26420307
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
片山 健夫 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (80313360)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光デバイス / 全光型論理素子 / 半導体レーザ / 偏光双安定 / フォトニクスネットワーク |
研究実績の概要 |
平成27年度は以下の研究で成果をあげた。 1. 偏光自己変調: VCSELの発振光を、偏光、強度、遅延時間などを調整して元のVCSELに戻す帰還光学系は本研究の基本となる光学系である。ボールレンズを加工した自己集光機能を持つ半球ハーフミラーで外部共振器を構成し、共振器内に偏光を90度回転させるために1/4波長板を挿入し、VCSELの発振光を自己変調させる研究を行った。半径3 mmのボールレンズで最高15.3 GHzの変調出力を得られ、変調は2つの外部共振器モードのビートによるものであることが分かった。 2. 波長の異なる光パルスによるANDゲート動作: これまでの光ANDゲート機能を用いたフリップ・フロップ動作では、セット光とデータ光パルスを同一波長に設定していたため、位相と波長の制御が必要でありシステムが複雑化する。そこで、波長の異なる2つの光パルスによるANDゲート動作を用いた光フリップ・フロップ動作を行った。1 ns幅のデータ光パルスの後半に500 ps幅のセット光パルスを重畳した場合、光の周波数差が2.0 ~ 4.0 GHzの間でフリップ・フロップ動作が可能であった。また、波長差を大きくすると大きな入力光パワーが必要となったが、偏光スイッチングのタイミングジッタが小さくなった。この方法を用いることにより、システムの構成を簡便にできる可能性がある。 3. 並列化による2ビットヘッダー識別: 光論理回路の拡張性を確認するため、偏光双安定VCSELを2個並列に用い4ビット500 Mb/s RZのヘッダー信号列中の2ビットに対してANDゲート動作を行い、その識別結果信号によって光スイッチを制御して40 Gb/s 11段PRBS NRZ信号のパケットスイッチングを行った。4つの光出力ポートのうち、ヘッダーの宛先が示すポートへペイロードを出力することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で示したように、本研究の基本となる帰還光学系の構築と、それを用いてVCSEL発振光の自己変調を行うことで応答特性の評価を行った。また、異なる波長の光パルスでANDゲート動作が可能であることを明らかにした。これらの成果はJKフリップ・フロップを実現するための基礎研究として重要であり、実際のJKフリップ・フロップ光学系を構築して動作を実現する前に実施したことで光学系を構築するための重要な知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
基本動作の研究で得られた知見をもとに光ファイバ系で帰還光学系を構築し、JKフリップ・フロップ動作の研究を実施する。偏光自己変調の実験から外部共振器の反射率が低いとスイッチングが起きず、帰還光学系においてもスイッチングに一定の強度が必要であること、さらに波長差がある光パルスであってもANDゲート動作が可能であることが分かったため、その知見をもとに光強度、波長差の設定を行う。まずは光ファイバを用いた光学系を構築してそれらの設定を確認するが、速やかに自由空間光学系に移行して高速化を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の基盤技術となる自由空間光学系による自己光パルス発生の研究において高速動作の可能性が見出せ、平成26年度に実施予定であった光ファイバによる帰還光学系の実験の一部を次年度に行うこととしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
光ファイバによる帰還光学系の実験を行うための光学部品の購入に使用する。
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