研究実績の概要 |
本研究では,表面プラズモン共鳴(SPR)法と,蛍光測定を組み合わせたSPR励起増強蛍光分光(SPFS)装置の高感度化,およびポリマーを用いた匂い検出膜の作製と匂い物質の検出を試みた. 匂い物質の対象としてトリニトロトルエン(TNT)を用い,TNT類似物質(DNP-gly)を固定化した金チップ上に,蛍光標識した抗体500 ppbを流通させたところ,蛍光が観測された.PMTにかける電圧を500 Vに固定し,0, 50, 250, 500 ppb蛍光標識抗体溶液をそれぞれ流通させた.その結果,抗体の濃度と蛍光応答は比例関係にあることが確認できた.また,電圧を500, 550, 600 Vと変化させると,電圧を上げるごとに応答値が大きくなった.以上の結果から,PMTの供給電圧を600 Vとし, TNTの間接競合法による検出を行った.250 ppb TNT抗体と10 ppb TNT溶液を用い, 3回繰り返し測定を行った.その結果,平均応答値は74.7 %となった.これより,間接競合法による匂い物質の高感度な検出が可能であることが示唆された. また,無機高分子を用いた匂い検出膜として,逆オパール膜作製条件の検討と匂い物質検出を行った. オルトケイ酸テトラエチルを用いたco-assembly法を用い,粒子径が500,350,200 nmのポリスチレン(PS)を鋳型として亀裂の少ない逆オパール膜を作製することに成功した.膜の構造色はそれぞれ黄緑,青緑,青紫となり,鋳型粒子の直径が小さい膜ほど短波長側の構造色を示すことが確認できた.また,500 nmのPS粒子を用いて膜を6個作製した.6種類のアルコキシシラン中に浸漬し,それぞれを個別に表面機能化し別々の吸着特性を与えることを試みた.その結果,アセトン,エタノール,1-プロパノールに対して,異なる応答パターンが得られ,識別が可能であった.
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