研究課題/領域番号 |
26420314
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研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
岸原 充佳 岡山県立大学, 情報工学部, 准教授 (50336905)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マイクロ波・ミリ波・テラヘルツ波 / X線リソグラフィ |
研究実績の概要 |
本研究課題は,放射光直接エッチングを利用してテフロンの微細加工を行い,得られるテフロンパターンに金属膜を蒸着させることで短ミリ波帯導波管回路を開発・集積化する内容である.26年度は,まず,短ミリ波帯(G帯, 140-220GHz)をターゲットにして,その帯域で動作可能なテフロン導波管機能回路を設計した.例としてE面導波管型方形空洞カプラの設計を行った.なお,放射光エッチングプロセスを用いるこれまでの試作は,寸法・露光時間等の制限ですべてH面導波管型回路であった.本年度の研究で初めてE面導波管型回路の設計と製作を試みた.E面導波管回路はいわゆる縦置きの回路形状で,H面導波管よりコンパクトにできるため,集積化に適している. E面導波管型方形空洞カプラは,方形寸法や入出力導波管の接続位置などをパラメータとするE面内の2次元界分布で回路特性が決定される.設計は,E面平面回路法で実施した.比誘電率2.04で満たされたE面導波管寸法を0.40 mm×0.80 mmに選び,TE10モードがG帯で伝搬するようにした.これを基に,中心周波数180GHzで3dB結合器を設計した.結合器は4ポート回路であるが,伝送特性のみ評価可能な測定環境を用いる都合上,結合器2個を接続して再度合成された出力を評価することとした.また,分離ポートの終端は短絡とした. これを基に,テフロンシート(厚0.80 mm)上に結合器パターンを写したマスクを設置し,ニュースバル放射光施設BL2で放射光直接エッチングを行った.その後,テフロン表面にAuの蒸着と電解めっきを施すことで金属導波管構造を得た.そして,V帯信号を3逓倍して得たG帯信号を試作した結合器に入力し,伝送特性のみを検波器で測定した.シミュレーションと比較して,測定結果には176GHz,183GHzに落ち込みが見られたが,再度合成された3dB結合器の出力をG帯域内で確認できた.測定結果に含まれる特性劣化の原因調査は,今後の課題と考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
26年度は,測定の不確かさを改善する目的でG帯ミキサを導入し,ダウンコンバートした信号を測定できる環境を構築する計画であった.このシステムを構築して実際に測定結果(周波数特性)も得られたが,これまでの検波器による測定と比べて有意な改善が見られなかった.測定器の制御プログラム等の再確認が必要と感じていることからやや遅れているとの認識である.
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今後の研究の推進方策 |
27年度は,測定器の制御プログラム等の再確認を行った後,引き続き26年度と同様の手順でG帯テフロン導波管機能回路の試作を行う.微小パターンを含むテフロンが(特に測定時に)強度不足で形状を維持できない問題に対処するため,テフロン導波管回路をアクリル板に樹脂等で固着させる方法を試みる.アクリル板はテフロン導波管回路の厚み・大きさに応じて掘り込みを設け,テフロン導波管回路が収納できる形状とする.この方式は導波管集積回路化に繋がる.基板上に半導体集積回路が載るのと類似の形態でテフロン導波管集積回路を実装する方針である. 試作は,複数の機能回路が合わさった一例として,短ミリ波帯のE面電力分配器とE面ホーンアンテナを一体化したパターンを試みる.放射光エッチングでテフロンシートの微細加工を行い,その表面に金をスパッタ蒸着させるが,アンテナ開放面の金属膜を完成後に除去するなどの工程を加える.アンテナの指向性は周波数固定で測定できるため,測定器周波数特性の不確かさの問題の影響は少ないと考えている. また,放射光エッチングおよびマスク精度検討のため,これまでに試作例のあるバンドパスフィルタに対し,マスク寸法誤差を考慮したテフロン導波管回路の製作評価を行う.
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