研究課題/領域番号 |
26420326
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研究機関 | 福岡工業大学 |
研究代表者 |
山内 寛行 福岡工業大学, 情報工学部, 教授 (70425239)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | デコンボリューション / 改良リチャードソンルーシー |
研究実績の概要 |
本研究は、大規模集積回路(VLSI)の面積と動作電圧(Vdd)のスケーリングを継続する場合に直面する2つの課題を協調して同時に解決することを目的としている。具体的には、VLSIを実現するCMOSトランジスタの微細化の究極課題である閾値電圧(Vt)の時空間ばらつきとリーク電流増大の問題を、回路の操作、制御によって協調的に解決することを目指している。具体的には、「抵抗変化型不揮発メモリ(ReRAM)にデータを退避し電源オフでリーク遮断する期間にVtばらつきを回復させることである」同時に、電源遮断時のデータを退避させるためのメモリとしてReRAMを想定している。ReRAMも時空間抵抗ばらつきがあるので、Vtばらつきと協調的に回復可能にすることを目指す研究である。これを実現するために初年度は、研究目的の実現可能性を機能レベルでデジタル的に確認した。そこで2年目は、実現可能性の評価を、統計的な計算手法を用いることで確率的に検証することに注力した。具体的には、CMOSトランジスタの閾値電圧(Vt)の時間依存性のある成分と時間依存性の2つの成分を未知と仮定し、少なくともそれらの2つの成分結合からなる全体分布の情報から、前記未知の2つの成分を分離するための手法(ブラインドデコンボリュウーション)を開発した。特にMATLAB等の既存の解析ツールに用意されているリチャードソンルーシーのデコンボリュウーションは誤差が大きく本研究が要求する精度では使用できないので開発する必要があった。これにより、本研究の目的を実現するために必要な時間依存性のある成分の統計的分布が計算可能になり、回復の必要度が定量的に得られるようになった。これらの成果は、IEEEの4つの国際学会で発表した。今回確立した統計手法を用いて時空間依存性のばらつき成分の回復動作による不良確率の削減などを定量的に示していくことが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を実現するために必要な時間依存性のある成分の統計的分布と回復後の分布を統計的に求め、定量的な不良確率値を計算する必要がある。それを実現する際の最大の関門は、MATLAB等の既存の解析ツールに用意されているリチャードソンルーシーを用いたブラインドデコンボリュウーションは画像の復元等を想定したもので要求される誤差が、ギガビットのメモリの1ビット不良確率を推定する際に必要な誤差のレベルに比較して大きく使用できないことである。しかし今回の研究で開発したアルゴリズムで誤差を本研究の要求レベルまで小さくする目途がついたことで閾値電圧や抵抗ばらつきの回復の必要度と不良確率が定量的に得られるようになった。今回確立した統計手法を用いて時空間依存性のばらつき成分の回復動作による不良確率の削減などの関係を定量的に示していくことが可能になり、本研究の目的である実現可能性を定量的に検証することに目途が立った。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度になるので、本研究の目的の重要度の大きなところの評価項目を定量値化し、まとめのフェーズに入る。1)具体的には、統計的な計算に基づいて、提案した回路操作による回復と不良確率の改善の定量化。2)統計的計算を可能にしたブラインドデコンボリュウーションのアルゴリズムの最終検証。これらの2つについて期間中に対外発表できるようにデータの獲得と整理、論文作成を着実に進める。又、その過程で残された詳細な課題と可能性のある解決手法を具体的に整理し、次の研究に結びつけることが可能なようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究で使用しているワークステーションの部品設備更新費用と研究アルバイト費用が別の予算から計上可能になり不要になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究期間の最終年度であり研究成果発表のための旅費や論文掲載費に計上予定。
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