自律分光制御型デバイス開発の最終年度においては、これまでの研究により培ってきた液晶・高分子材料からなる有機複合体デバイス作製技術に加え、温度依存性の異なる光異性化材料の設計技術を応用した研究に取り組んだ。この結果、調光制御において特に重要な生活環境温度範囲(25~45℃程度)における赤外線領域の選択反射波長と帯域幅の制御特性との関係を明らかにすることができた。 具体的には、ネマティック液晶に螺旋ねじれを生じさせるカイラル剤の種類を変化させて添加量と温度依存性との詳細な測定を行い、カイラル剤毎の螺旋ねじれ力の温度依存パラメータを算出した。これらのパラメータに基づき異なる温度依存性を有するカイラル剤の混合系材料を設計することで、生活環境温度範囲において優先的に選択反射波長を制御可能な材料を作製した。 さらに、螺旋ねじれ構造を有するコレステリック材料にモノマーを添加し光硬化作用を行うことで、選択反射波長帯域の幅や温度依存性が変化する光学特性を見出した。この光学特性を上述したカイラル剤の混合系で作製したデバイスと組み合わせることで、太陽光の日射エネルギーの分布が大きい領域(800~1100nm)での調光性能を分光測定結果より明らかにした。このように開発した自律分光制御型デバイスの可視透過性能及び日射制御性能の解析を行い、可視域では75%以上の透過率を確保したまま、10%程度の日射制御性能が得られることを確認することができた。
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