研究課題
本研究は、テラヘルツ帯におけるこれまでの世界最高性能の超伝導SISミキサをさらに改良し、SIS接合自身が潜在的に有する量子力学的極限の雑音性能まで高めることを目指した。改良は以下の2点である。(1)ミキサの高周波回路の一部に用いているアルミ(Al)を高品質な窒化ニオブチタン(NbTiN)で置き換え、回路を無損失化する。(2)NbTiNとSIS接合のNbを接続した際のエネルギーギャップ差によってNb電極中にトラップされる過剰準粒子が引き起こすSIS接合の電流-電圧(I-V)特性の劣化を新たなデバイス構造で低減する。2014年度に(1)を解決し、2015年度はNb電極の体積を厚さ方向に増大し、過剰準粒子数に対する超伝導電子対数の比を上げ、I-V特性劣化を低減した。2016年度はSISミキサデバイス作製に着手した。高臨界電流密度(20 kA/cm2程度)のNb/AlOx/Nb接合を用いることを想定し、高周波回路設計のための接合静電容量をSパラメータ測定により新たに求めた。得られた100 fF/um2の値を用いて2接合同調回路を有するSISミキサデバイスを設計、作製した。接合の大きさは直径1 umである。ドライエッチングによりSIS接合部の形成を行う際、接合上部のフォトレジストの耐エッチング特性から、接合全体の厚さは280 nm程度(上部、下部電極とも140 nm)に制限された。このNb接合を用いて、NbTiN/SiO2/NbTiN伝送線路と従来のNbTiN/SiO2/Al伝送線路を持つデバイスを作製し、I-V特性を比較した。その結果、従来デバイスよりギャップ電圧が低く、受信機雑音温度の理論計算からも現時点では従来の性能を凌駕できないことが分かった。しかし、薄いNb電極のデバイスよりI-V特性は確実に改善されており、新たな作製プロセスの開発により性能改善は可能であると結論した。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件)
IEEE Transactions on Applied Superconductivity
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