研究課題/領域番号 |
26420331
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
金高 健二 独立行政法人産業技術総合研究所, 無機機能材料研究部門, 主任研究員 (50356911)
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研究分担者 |
裏 升吾 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (10193955)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光集積回路 / 光導波路 / グレーティング / 導波モード共鳴 / 光共振器 / 波長フィルタ / ミラー |
研究実績の概要 |
1.はじめに 情報処理システムの高性能化・省電力化のため、光電子融合回路の実用化が急務である。高密度光配線の集積実装技術を構築することは、実用化に向けた重要課題の一つである。本研究の目的は、面発光レーザから高密度光配線へ信号導波光を結合する実装手法として新規な光集積素子を提案・検討し、理論的・実験的に実証することである。 2.素子作製と動作検証 導波モード共鳴フィルタ(GMRF)の開口サイズの微小化を目指し、分布ブラッグ反射器ペアで構成する光導波路共振器内にGMRFを集積した、共振器集積導波モード共鳴フィルタ(CRIGF)を提案し基本動作を実証している。本年度はまず、開口サイズをさらに微小化したCRIGFを試作し評価を行った。これまでに実証した開口サイズは10ミクロンが最小値であったが、4ミクロンのCRIGFを試作し動作を実証した。次に、CRIGFと金属ミラーとを集積した共振器集積導波モード共鳴ミラー(CRIGM)を試作し評価を行った。高反射率を維持したまま反射位相が共鳴波長付近で急峻に変化する、という動作予測であったが、作製した素子は反射位相は予測どおり変化したが反射率も急峻に変化するノッチフィルタリング特性を持つ事が明らかになった。 3.理論検討と動作シミュレーション CRIGMがノッチフィルタリング特性を持つ原因を検討するため、GMRFと金属ミラーとを集積した導波モード共鳴ミラー(GMRM)を厳密結合波解析法で動作解析した。GMRFと金属ミラーにより共振器が構築されるため、共鳴波長付近においてノッチフィルタ特性を示す構造もある事を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度は、CRIGMの試作と動作検証を主に行ったが、研究当初に予測していた「反射率は高いままで反射位相だけが共鳴波長付近で急峻に変化する」という素子動作とは大きく異なり、作製した素子はノッチフィルタリング特性を示した。このような素子動作の原因究明に時間を費やしたため、当初計画より少し遅れている。しかし、構造によってはCRIGMが新たなフィルタ素子として動作することが実証できた。また、次年度に予定していた開口サイズをミクロンオーダにまで微小化したCRIGFも動作実証できた。こうした原因究明と微小開口CRIGFの実証は、面発光レーザの実装を目指している本研究においては非常に重要であり、これらの知見が得られた事で来年度以降は計画通りに研究が遂行可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
CRIGMがノッチフィルタリング特性を示す動作原理を理論的に明らかにする事ができたので、今後はこの検討を基に反射率低下の無い素子の作製と動作検証に向けた検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画では、作製した素子を外部共振器用ミラーとして評価するための光学評価システムを構築するために、微動ステージ等を購入する予定であった。しかし、実際に作製した素子は当初予測とは大きく異なり、外部共振器ミラーとしては動作困難な特性を示した。従って、光学評価システムを構築する前に、素子動作が予測と違う原因の究明が当研究における急務であると判断し、こちらに注力したために残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度と同様に素子の作製と評価のための材料や光学部品を購入する。また、昨年度購入予定であった、光学評価システムを構築するための微動ステージや固定治具等を購入予定である。あわせて、これまでに得られた成果について国内外の学会で発表する。
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