研究課題/領域番号 |
26420334
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研究機関 | 独立行政法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
牧瀬 圭正 独立行政法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所 ナノICT研究室, 研究員 (60363321)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | トンネル接合 / 超伝導デバイス / 窒化物薄膜 / 酸化物薄膜 |
研究実績の概要 |
薄膜の超伝導―絶縁体転移や金属―絶縁体転移はキャリア数によっても発現することがしられている。そこでキャリア数の変調すなわちFET構造で膜の物性を超伝導から絶縁体に変化させることで、多機能なタンデム型素子の実現を目指している。本年度は酸化インジウム亜鉛(IZO)と酸化インジウム-ガリウム-亜鉛(IGZO)膜を成膜時の酸素濃度を変えて成膜し、金属―絶縁体転移の詳細を調べた。その結果、絶縁体的に振る舞う膜に対して、低温での輸送特性は電子間相互作用の寄与を考慮したモデルで説明できることが分かった。さらにキャリア数に対する金属―絶縁体転移の相図を作成し、デバイス作製に必要なキャリア数パラメータを抽出することができた。 次に得られたパラメータを用いて超伝導-IZO-超伝導で構成させるトンネル接合を作製し、輸送特性を評価した。トンネル接合は超伝導窒化ニオブ(NbN:超伝導転移温度16K)と、IZO層はキャリア数を多くした金属的なIZO膜とキャリア数を少なくした絶縁体的な温度依存性を示すIZO膜の2つの層からなる。その結果、電流―電圧特性の非線形性と非対称性を確認することができた。バリア層が単一の絶縁体層からなるジョセフソン接合では電流―電圧特性に非線形性が現れるが、通常非対称性は見られない。この非対称性はバリア層のIZOのキャリア数が異なるため、超伝導電極の界面との近接効果が上部電極と下部電極で異なることと、IZO膜で膜中の酸素移動が極低温で起きていることが原因として考えられる。今後、IZOバリア層のキャリア数や膜厚を変え、デバイス動作原理について詳細に実験を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度計画では超伝導窒化物薄膜と酸化物薄膜の成膜条件の最適化を行い、金属―絶縁体転移と超伝導ー絶縁体転移の実証を行うことが目標であった。酸化物薄膜であるIZOとITZOとIGZOに関して、電気抵抗率、キャリア数、易動度等の物性パラメータの評価は順調に進んでおり、キャリア数誘起の金属-絶縁体転移に関する相図の作成や、電気輸送特性の理論と実験まで行うことができている。計画としていた目標は達成できていると考えている。しかし窒化物超伝導膜であるNbNの超伝導ー絶縁体転移に関しては、膜の不均質性の問題があるため、さらなる均質性の向上に向けて、成膜条件の検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度にはじめているデバイス作製について、プロセスの最適化を行う。窒化物薄膜はフッ素系のガスを用いてRIEでドライエッチングすることが可能であるが、酸化物薄膜はできない。そのためリフトオフプロセスを用いてデバイス作製を行っているが、レジスト硬化等問題がおきており、デバイス特性の再現性が悪くなることが考えられる。そこでECRによる物理的なエッチング法の検討を進める。さらにデバイス評価用の測定系の構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
酸化物薄膜の最適化が順調に進んだ一方で、窒化物薄膜の成膜装置等に問題が生じた。窒化物薄膜用の最適化のための基板は劣化しやすいので、少量のロットで購入する必要がある。 そのため、装置の修理完了の遅れにより基板購入の遅れさせたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
薄膜最適化およびデバイス作製のための試料材料・原料基板および薬品購入に予算を使用する予定である。
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