研究課題
本研究では,位相限定相関(POC: Phase-Only Correlation)関数を用いた信号マッチング技術の理論的な妥当性および性能限界を明らかにすることを目的としている.さらに,方向統計学に基づくPOC関数の新たな統計的解析法を確立することをめざしている.今年度は,POC関数の確率分布を導出し,POC関数のピークとサイドローブを区別するための閾値を適切に決定するための理論構築をめざした.このことは,POC関数を用いた信号マッチングの性能限界の評価に必要である.従来は, POC関数の期待値と分散を求めていただけであったが,信号マッチング技術において,2つの信号が似ているか似ていないかを判定するためには,POC関数のピークとサイドローブの確率分布を明らかにし,それら両者が明確に区別できる範囲を求める必要がある.具体的な方法として,2つの信号の位相スペクトル差を正規分布に従う確率変数であると仮定し,POC関数の確率密度関数を理論的もしくは数値的に導出し,実験値と比較することによってその正当性を示した.この研究成果の今後の発展性として,POC関数を用いた信号マッチング技術の雑音に対する耐性を表す評価指標を導出し,どの程度の雑音が許容できるのか,その範囲を明確化することが必要とされる.また今年度は,方向統計学に基づくPOC関数の統計的解析に関して学術論文3件,国際会議1件,国内での招待講演1件の発表を行った.研究期間全体を通して,2信号の位相スペクトルを2変量確率変数と仮定した場合のPOC関数の統計的性質の定式化,信号に白色ガウス雑音が重畳したときの位相スペクトル変動に対するPOC関数の変動の評価,位相スペクトル差を確率変数と仮定した場合のPOC関数の確率密度関数の導出などの研究に取り組み,POC関数を用いた信号マッチング技術に関して,方向統計学の観点からさまざまな理論構築を行い,それらの数学的性質を明らかにした.
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: E100-A ページ: 印刷中
Journal of Signal Processing
巻: 21 ページ: 47-51
10.2299/jsp.21.47
巻: E99-A ページ: 1790-1798
10.1587/transfun.E99.A.1790