研究課題/領域番号 |
26420338
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
高橋 応明 千葉大学, フロンティア医工学センター, 准教授 (70267342)
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研究分担者 |
伊藤 公一 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (90108225)
齊藤 一幸 千葉大学, フロンティア医工学センター, 准教授 (80334168)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 無線電力伝送 / アンテナ / 医療応用 / 人体モデル |
研究実績の概要 |
人体埋込型医療機器への電力伝送を目的に研究をしている。はじめに,カプセル内視鏡への電力伝送を検討した。電力伝送に使用する周波数の検討を行った結果,現在カプセル内視鏡の画像伝送に使用されている周波数の433MHzと315MHz,他に使用可能な13.56MHz,920MHz,2.45GHzなどと伝送損失,アンテナの小形化などの観点で比較した結果,画像伝送に使用している周波数と同じ433MHz帯が優れており,この周波数で検討していくことにした。 検討していく周波数帯が決定したので,人体組織の電気定数の調査を腹部を中心に20以上の組織で行い完了した。カプセル内視鏡の電力伝送時に影響を与える組織を選定した結果,小腸の電気定数は,筋肉の電気定数と差が大きく,カプセル内視鏡と密着しているため,受信アンテナの反射係数に大きく影響し,脂肪の電気定数は,全身に分布しているため計算結果に大きく影響する。以上より,カプセル内視鏡が小腸に位置する場合では,筋肉,小腸および脂肪の組織が特に影響が大きく,模擬する必要があると結果を得た。 体外の電力伝送用送電アンテナとカプセル内視鏡内の受電アンテナの基本設計を行い,伝送効率等のシミュレーションを行った。伝送効率は人体組織による損失により数%程度と低いもの,カプセル内視鏡を駆動するのに必要な電力が確保できそうな目途が立った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度予定していた課題として,1.周波数(430MHz,920MHz, 2.45GHz)において簡易な人体モデルを用いた無線電力伝送のシステム設計を行い,周波数の選定,2.体外用アンテナはアレーアンテナとし,腹部の大きさやカプセル内視鏡が移動する範囲などを勘案して,アレーアンテナの素子数,間隔を決定,3.人体の組織構造,皮膚,脂肪,筋肉,腸,必要に応じて他の組織も含めた模擬した人体モデルの構築,4.モデルの構築と平行して,生体適合性のある材料の調査を行い体内及び体外用のアンテナとして使用可能な材料の選定,5.小形の体内用アンテナの開発の5項目を挙げていた。 1.周波数の選定は433MHz帯で検討を進めて行くことが決定し,完了。2.体外用アレーアンテナの素子はほぼ検討を終了したが,素子間隔などは引き続き検討が必要である。3.人体モデルの構築はシステムに影響を与える組織の同定などが完了し,簡易モデルの構築が完了している。4.生体適合性のある材料については,幾つかの候補を選定したが,他にも使用可能な材料がないか引き続き調査を行っていく。5.体内用小形アンテナの開発は,2つのモデルを提案した。カプセルの向きに依存しないアンテナを提案しているが,さらに伝送効率の高いアンテナを引き続き検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に行った,体内無線電力伝送のシステム設計を基に,選定した周波数で実現する体内及び体外用アンテナ開発を行う。カプセル内視鏡は体内では移動と共に向きが大きく変わるため,安定して無線電力伝送および通信ができるアンテナを設計する必要がある。そのためには体外用アンテナは平面円偏波アンテナである必要がある。カプセルが回転しても受信できるように,体内用アンテナは軸対称のアンテナにする必要がある。開発には数値シミュレーションを主として用いるが,組織構造を精密に模擬する必要があり,更にアンテナもμmオーダの寸法になることから,解析にはメモリ量と計算時間が膨大に必要になると予想される。 また,アレーアンテナの電力伝送を効率良くするため,送信アレーアンテナの給電方法についても検討を行う。カプセル内視鏡は小形で位置が移動するため,複数あるアレーアンテナの素子全てから電力を放射する必要はない。カプセル内視鏡周辺の素子アンテナだけに給電し,位相を制御することによって伝送効率のアップを図る。 最後に,設計した体内及び体外用アンテナの有用性を確認するために,検証実験を行う必要がある。筋肉などの主要な組織の実験用ファントムは存在するが,小腸や肝臓といった組織のファントムは,開発がなされていない。そのため,評価に必要な実験用人体モデルの構築を行う。この複数の組織を模擬した人体モデルを用いて,アンテナの電気的特性の検証を行う。 さらに,カプセル内視鏡以外の人体埋込型医療機器への電力伝送の検討を行う。 以上の研究成果を国際会議および国内学会で発表するとともに,学術論文の執筆を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度ということもあり,当初想定していたほど成果発表ができず,その分の旅費を使用しなかった。また,ファントムやアンテナの試作なども想定したほどできなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降は,研究を推進するためにもアンテナの試作やファントムの試作が多く必要となる。また,2年目にあたるため,成果発表も多くなると見込んでいるため,本年度分も含めて,消耗品,旅費を使用する予定である。
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